2015年12月17日
車の新税 燃費性能で4段階の課税  実質増税の車種も

 政府・与党は2016年度税制改正に盛り込む自動車関連の新税について、自動車の購入時に燃費性能に応じて4段階で課税する内容を固めた。新税は17年4月の消費再増税に合わせて廃止される自動車取得税に代わるものとなる。
 現在の自動車取得税は、一般自動車に本則3%、軽自動車や営業用自動車に本則2%の税率がかけられ、そこからエコカー減税によって本則3%から非課税まで6区分で燃費性能に応じた取得税の減免が行われている。
 導入される新税では、本則3%は変わらず、そこから燃費性能に応じて、2%、1%、非課税と、4段階の税率に区分されることになる。軽自動車も同様に、本則2%、1%、非課税と、1%刻みで3段階に区分する。燃費性能は国土交通省の定めた「2020年度燃費基準」を用い、現行基準よりも非課税となる車種が増える一方で、一部では増税となる車種もあるようだ。例えば20年度基準+10%のガソリン車では、現行制度では1・8%の税率がかけられるが、新税では2・0%に税負担が増えることになる。
 税収全体では現行の取得税より200億円減り800億円となる見通しで、政府は17年4月の消費再増税を考慮して、実質減税となる方針を盛り込んだことになる。また燃費性能に優れた車を税制面から優遇することで、新車への買い替え需要を喚起し、消費の落ち込みを和らげたい狙いだ。
 自動車取得税については、JAFや日本自動車工業会などの業界団体からは、そもそも消費税との二重課税であり、道路特定財源が一般財源化して課税根拠を失っているとする強い反発の声があり、新税についても、「自動車関係諸税の中から代替財源を確保しようとするのは筋違い」といった反対意見が根強い。

2015年12月10日
プレミアム商品券を町長・議長が上限超え購入  家族で並んで大量買い

 滋賀県甲良町の町長や議長が、上限を超えてプレミアム商品券を購入していたことが明らかになった。
 同町では1万円で1万3千円分の買い物ができるプレミアム商品券を2015年7月15日に計4千冊売り出し、1人2冊までの購入上限を設定。商品券は同月24日に完売した。その後、町民から「町関係者が上限を超えて購入している」との情報が寄せられ、9月に真相究明のための特別委員会が設置されていた。
 11月25日に開かれた特別委では、町長である北川豊昭氏が1人2冊までの上限を超えて、5冊のプレミアム商品券を購入していたことが明らかとなった。家族5人が窓口に並んで2冊ずつ計10冊を購入した上で、7月22日〜23日に職員に頼んで5冊購入してもらったという。理由について「『1人2冊まで』と『1回2冊まで』を勘違いしていた。売れ残りがあれば買ってもいいかと軽く考えていた」と述べた。
 また12月2日の委員会では、これまで黙秘を続けていた建部孝夫議長が、30冊を購入していたことを明かした。家族の5人分で計10冊を購入し、その後さらに20冊を買い足したという。
これまで黙秘していたことについては「言いたくなかったから」と答え、「上限について職員から1回2冊までと説明を受けた。時間差をつけて何回かに分けたので一度に多くは買っていない」として辞職は否定した。
 町が発行した広報チラシには「1人2冊まで」との表記があったが、実際には購入した人へのチェックなどはされていなかったという。
 「プレミアム商品券」は、政府が地方創生施策の一つとして自治体に配分した約1600億円の交付金を基にしたもの。全国で1709の市町村と30の都道府県が商品券や旅行券を発行した。15年7月には、東京・立川市で販売を担当した多摩信用金庫の職員が、上限を超えて購入したり顧客に優先販売したりするケースが起きている。

2015年12月3日
ふじみ野市が固定資産税を過徴収  1億2千万円返還へ

 埼玉県ふじみ野市は11月24日、市内の土地100件近くで固定資産税や都市計画税の過徴収があったことを公表した。条例に基づいて過去20年間にわたり返還する予定で、返還額は還付加算金や国保税も含めて約3千万円になる見通し。全国で相次ぐ固定資産税の徴収ミスを受けて同市では市内の土地や家屋を全件調査しており、今回の過徴収が判明した時点で調査は2割しか終わっていないという。最終的な返還額は1億2千万円近くにも上る見込みだ。
 今回過徴収が判明したのは、市内の95件の土地。都市計画道路の予定地や高圧線下での評価額の減額措置を適用していなかった。計算ミスが何年前からあったかは明かされていないが、同市は条例に基づき、20年前の1996年分から過徴収額を返還する。返還額は利息に当たる還付加算金を含めて計2800万円。さらに固定資産税額をベースに資産割額が決まる国民健康保険税も計140万円が返還される。個人では350万円、法人では1350万円の還付を受ける土地所有者もいるという。
 固定資産税をめぐっては、数年前から自治体の計算ミスによる過徴収が全国的に相次いでいる。埼玉県新座市では過徴収により居宅を失う夫婦もおり、計8億円超の返還額となるなど、全国的な問題となっている。
 こうした状況を受け、ふじみ野市は2014年6月から自主的な調査を行い、すでに14年9月までに3件、約95万円の過徴収が発覚していた。15年度からは民間会社と提携して市内の土地4万4千件、家屋3万3千棟を対象に全件調査を始め、今回95件が新たに判明したことになる。しかし10月29日時点で調査はまだ2割程度しか終わっていない状態だ。16年8月の調査完了までに新たな過徴収が見つかるのは確実で、同市は来年度に200件、計1億1570万円ほどの返還額を見込んでいるという。

2015年11月26日
国税庁の通信簿  3項目で「がんばりましょう」

 財務省は11月13日、平成26事務年度の国税庁の実績評価書を公表した。事務年度(7月から翌年6月)ごとに、設定した目標に対して国税庁がどれだけの実績を残したかを5段階で評価するもので、いわば国税庁の「通信簿」と呼べるものだ。
 評価項目は大きく分けて、(1)内国税の適正かつ公平な賦課および徴収、(2)酒類業の健全な発達の促進、(3)税理士業務の適正な運営の確保――の3つがあり、その下に細かい業績目標が設定されている。
 26事務年度では、3つの大目標のうち、「酒類業の健全な発達の促進」と「税理士業務の適正な運営の確保」で、5段階中2番目に高いS評価が下された。酒類業の発達促進については、日本酒の海外輸出促進に向けて国際会議のレセプションで輸出セミナーを開催したことなどが評価された。税理士業務の適正な運営の確保では、税理士会との定期的な協議会を開催していることなどが高い評価の理由としている。
 一方、「進展が大きくない」として5段階中4番目、通信簿で「がんばりましょう」に当たるB評価を与えられたのが、「内国税の適正かつ公平な賦課および徴収」だ。内訳を見てみると、4つ設定された小さい実績目標のうち、「国際化への取組」ではS評価を得たものの、「税務行政の適正な執行」は相当程度の進展があったと認めるA評価にとどまり、残る「納税者サービスの充実」、「適正な調査・徴収などの実施および納税者の権利救済」はともに大きな進展が見られないとしてB評価を下された。
 納税者サービスでは、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」の利用満足度が目標値を下回ったことが低評価の理由の一つとされている。26事務年度では85%という目標値を設定したが、実績値は83・6%にとどまり、3年連続の目標未達成となった。国税庁は電子申告などICTを活用した申告・納税の推進を26事務年度の重点項目に挙げていたが、e―Taxの普及促進でもA評価にとどまるなど、伸び悩みを見せている。
 納税者サービスの分野ではほかに、納税者からの相談への対応についても目標値を達成できなかった。
 26事務年度の国税庁の「通信簿」をまとめると、6つある業績目標のうち、「確申コーナー」「相談業務」「審査請求への対応」がB、残る3つがSだった。最高のS+と最も低いC評価はなかった。

2015年11月19日
軽減税率で中小企業に「みなし課税」導入へ  対象は売上高5千万円以下?

 増税に合わせて導入が検討されている軽減税率をめぐり、与党は、実態にかかわらず一定の割合を軽減税率の対象とする「みなし課税」制度を導入する方向で検討に入った。経理を簡素化することで、複数税率導入にかかる事務負担を軽減する。
 「みなし課税」制度とは、売上額や仕入額のうち、一定の割合を軽減税率の対象として一律で算出する方法。現在も課税売上高が5千万円以下の事業者を対象とした「みなし課税」制度があるが、新制度の対象となる事業者は、中小企業すべてという案と現行制度と同様に売上高5千万円以下の事業者に限定する案の2つがあり、今後、中小企業の実態などを踏まえながら検討を進めていく。
 制度を導入する場合のみなし課税割合は、現行制度同様に、業種ごとに変えることになりそうだ。現在のみなし課税制度ではそれぞれ、卸売業が90%、小売業が80%、製造業などが70%、サービス業などが50%、不動産業が40%、その他が60%となっている。実際の売り上げや仕入れ額にかかわらず機械的に算出するため、実態よりも多く納めなければならなかったり、逆に手元に「益税」が残ったりすることもあり得る。
 与党は軽減税率導入に絡み、商品ごとに税率や税額を記載した専用の伝票(インボイス)を使う方針で一致しているが、事業者の負担が過大となるため、数年間の経過措置を設けるとしていた。一定規模以下の事業者には「みなし課税」制度を適用し、大企業については別の簡素な経理方式を検討するという。

2015年11月12日
高速増殖炉「もんじゅ」に異例の勧告  税金1兆円投入も20年実績ゼロ

 原子力規制委員会は11月4日、福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐり、所管する文部科学省に対して運営体制の見直しを勧告した。もんじゅの運営主体となっている日本原子力研究開発機構を「(もんじゅを)任せるには不適当」と断じ、同機構に代わる運営組織を提示するよう文科省に求めた。これまでに1兆円規模の税金が注ぎ込まれ、現在も年200億円の維持費が投入されている夢の原子炉が、何の実績も残さぬまま存廃の岐路に立たされている。
 もんじゅは、発電をしながら新たな燃料を生み出す「夢の原子炉」として1994年に送電を開始したが、早々に冷却材のナトリウム漏れ事故を起こし、そのまま95年に運転を停止。2010年、14年ぶりに運転再開されたものの、再び3ヶ月後に重さ3・3トンの核燃料交換装置が落下して抜けなくなるトラブルが発生し、運転を停止した。それ以来、現在に至るまで運転は再開されていない。
 その間にも、計器の誤作動、点検の不備、トラブルの隠ぺいなど管理上のさまざまな問題が発生。12年にはトップの交代を含む体制の刷新を行ったものの体質は変わらず、過去3年間で9回の保安規定違反が確認されていた。
 規制委はこうした状況を踏まえ、同機構がもんじゅを運転するための基本的な能力を持っていないと判断したことになる。規制委の田中俊一委員長は、「20年間同じことを繰り返しており、勧告は長期的な経緯に基づく判断だ」として、5人の委員の共通した認識だと述べた。文科省から新たな運営主体が示されなければ廃炉もあるのかとの質問に対しては、「廃炉にするかどうかを含めて文部科学大臣が考えることだ」と言うにとどめた。
 もんじゅは事業が始まった1980年から今年に至るまでで、建設費5886億円(うち公費4504億円)、運転・維持費4339億円(すべて公費)が投入されている。また現在も、維持費として年間200億円の税金が投じられている。

2015年11月5日
法人住民税1兆円を再配分  東京都などの反発必至

 政府は、自治体が企業から受け取る法人住民税のうち1兆円を国税化し、財政力の弱い地方自治体に再配分する仕組みの検討を始めた。地方財源の偏在を是正することが狙いだが、東京都など税源を失う側の自治体からは強い反発が起きることが予想される。
税源偏在の是正措置としてはすでに、法人事業税の一部を国税化して財源の足りない自治体に配分する地方法人特別税や、法人住民税の一部を国税化して地方交付税として配分する地方法人税などがある。
 法人住民税からもすでに税収3兆円のうち6千億円が国税化され、地方に再配分されているが、2017年4月の10%への消費再増税を見越し、さらに4千億円拡大して計1兆円を偏在是正の財源とする考えだ。
 これらの地方税の「国税化」による是正措置は、財政力のある自治体だけでなく、大多数の自治体が当初は「地方分権の原則に反する」として反対していたが、「国には金がない」という前提のもと、奪われる都市対奪う地方の構図に変わってきたという経緯がある。
 東京都は9月、「地方税財政に関する東京都の主張」とする文書をまとめ、こうした地方間での税源の移動による国の偏在是正措置を「応益性の原則を形骸化させ、地方自治体間の対立を生み出しかねないもの」と批判した。一方47都道府県の知事でつくる全国知事会は、「税源の偏在を是正すべきだ」として再配分を拡大する動きに賛同しているなど、両者の溝は依然深いままだ。
 地方財政審議会が6月にまとめた意見書では、地方の財源不足は15年度で約8兆円に上ることが明らかとなっており、財政基盤の強化は喫緊の課題であることは間違いない。だが、国が「一部国税化」という方法に依存し、地方対地方の構図を煽るだけならば、地方財政の根本的な安定にはつながらない。

2015年10月22日
JAFが自動車関連税制の見直し要望  「課税根拠失われている」

 日本自動車連盟(JAF、小栗七生会長)は10月9日、平成28年度税制改正に向けた要望書を公表した。ユーザーへの過重な負担になっていることから自動車取得税や自動車重量税の廃止を求め、新たに導入が検討されている環境性能課税についても「自動車関係諸税から代替財源を確保することはユーザーの負担軽減にならない」として反対の立場を表明した。
 JAFは要望に先立って自動車ユーザーに対してアンケート調査を行い、現在の自動車関係税制による税負担を98%のユーザーが負担に感じているとして負担軽減のための見直しを要望した。
 特に自動車重量税については、そもそも導入された経緯が「立ち遅れた我が国の道路整備を行うために、受益者負担の観点から、道路特定財源としてユーザーに負担を求めたものだった」として、21年度税制改正で道路特定財源が一般財源となったことを受けて「課税根拠を喪失している」と指摘した。さらに自動車の取得時には消費税と自動車取得税、保有時には自動車税(軽自動車税)と自動車重量税がそれぞれ二重課税されているとして、取得税と重量税の即刻廃止を求めた。
 JAFは地方格差の問題からも、自動車税制のあり方に疑問を投げ掛けている。要望書では、公共交通機関が不便な地方では一家で複数台の自動車を保有せざるを得ない状況にあるとして、自動車の保有に重い税負担を課すことは地方格差の助長にもつながっていると問題視した。
 自動車関連税制をめぐっては、自動車取得税については消費税率10%への引き上げ時に廃止することが予定されている。しかし同時に、環境性能に応じて課税される新税の導入も検討されていることに対し、要望書では「事実上自動車取得税に取って代わるものと考えざるをえない」として、「一つの税の廃止と引き換えに一つの税の廃止と引き換えに他の諸税を導入したり新税を創設したりすることには反対」との姿勢を示した。

2015年10月15日
早くも実害発生  マイナンバー詐欺に注意!

 内閣府、特定個人情報保護委員会、消費者庁、総務省は10月1日に共同で、スタートしたばかりのマイナンバー制度に便乗した詐欺が発生していることへの注意喚起文書を作成・公表したが、全国初とみられるマイナンバー詐欺の実害が出たことを受けて、早くも内容の更新を迫られる事態となった。
 文書では、マイナンバーの通知・利用、番号カード交付手続きで、口座番号、口座暗証番号、所得・資産、家族構成、年金・保険などの情報収集や、金銭要求を行政が電話で行うことはないと注意。ATM操作を依頼することもないとした。また、マイナンバー通知の際に配達員になりすまして代金を請求する詐欺への注意喚起も付記。詐欺の手口として、「あなたの名前やマイナンバーを貸してほしい」といった依頼があり得ることも指摘している。
 内閣府コールセンター、地方公共団体、消費生活センターには、マイナンバーに便乗した不正勧誘や個人情報取得行為に関する情報がすでに寄せられているという。文書の最後には主な相談事例がまとめられており、10月6日に判明したばかりの詐欺の実害が同日に追加掲載された。関東に住む70代の女性は、まず偽のマイナンバーを教えられ、その後に別の電話を受けてその番号を伝えたところ、後日「マイナンバーを教えたことは犯罪」と脅された。そして、教えてしまった記録を改ざんするための費用として要求された金額を支払ってしまったという。文書では、不正な提供依頼を受けて自分のマイナンバーを他人に教えてしまっても刑事責任を問われることはないと注意喚起している。

2015年10月8日
宝塚市が固定資産税を28年間過徴収  道路予定地の減額措置を適用忘れ

 兵庫県宝塚市は9月25日、都市計画で道路建設予定地となった市内の複数の土地について、1988年度から28年間にわたって固定資産税を過大に徴収していたことを明らかにした。過徴収額は、資料が残っている96年度からの20年間で約3200万円に上り、28年間ではおよそ3700万円に上るとみられる。同市は96年度以降分については返還する方針で、返還額は利息などを含めて計約4700万円になる見通しだ。
 過徴収されていたのは、市内の254件の土地。2015年度分だけで30万円近くを過大に徴収されていた土地所有者もいるという。
 同市では、道路建設予定地になると新たに建築物を作ることへの制限がかかるため、固定資産税評価額を最大で3割減額する措置が設けられている。しかし担当者が都市計画のチェックを怠ったため、都市計画で決定された約8千件の予定地のうち254件が措置を適用されていなかった。
 同市は地方税法や市の返還要項に基づき、96年度以降の20年分にあたる3200万円については全額の返還を行うとしている。しかし利息分の1500万円は税金から出されることになり、またもや行政の怠慢のツケを納税者が負担させられる形だ。さらに88年度〜95年度の8年分について同市は「市の要項にないため返還できない」としており、土地所有者にとっては「取られ損」となった。

2015年10月1日
軽減税率制度で自公の対立鮮明に  山口公明代表「財務省案受け入れられない」

 消費税10%時の負担軽減策として財務省から軽減税率制度の代わりに提案された還付金制度に対し、公明党が反対姿勢を鮮明に打ち出した。同党上層部には当初、還付金制度案を前向きに評価する向きもあったが、党内の強い反発を受け、反対へ舵を切った。軽減税率に慎重な自民党は還付金制度案を軸に負担軽減策を検討する構えで、自公の対立が強まりつつある。
 「財務省の考え方をそのまま受け入れるわけにはいかない」。公明党の山口那津男代表は9月20日、東大阪市での街頭演説でついに還付金制度案の受け入れを拒否する考えを明言した。
 還付金制度案は消費税10%時に酒類を除く飲食料品を購入する際に支払った消費税の一部がのちに申請に基づき還付される仕組み。軽減税率制度の導入を検討してきた与党税制協議会が財源、対象品目の線引き、経理事務負担の三つの課題で行き詰まり、財務省が代替案として編み出したものだ。公明党の斉藤鉄夫税調会長は当初「難しい連立方程式の解だ」として前向きに評価していたが、党内に「選挙で公約した軽減税率制度とは言えない」との批判が広がり、受け入れ拒否に傾いていった。
 この案の作成に関わったのは財務省主税局幹部と自民党の野田毅税調会長、公明党の北側一雄副代表のみ。公明党は税調トップの斉藤氏すら蚊帳の外に置かれた。党税調の重鎮が税制の決定権を握る伝統的な税制改正プロセスに則った形だが、安倍政権では党税調にかつての強力な主導権がないのが実情。主税局は公明党を中心に噴出した異論の抑え込みに失敗し、自公の対立を招いた。
 自民党は還付金制度案について、修正には応じてもあくまで同案を軸に検討していく構えを崩していない。公明党との隔たりは大きく、同党に歩み寄りを求める方針だ。しかし、公明党は昨年衆院選などで繰り返し軽減税率の導入を公約してきた経緯があり、軽減税率が実現しなければ「党内が持たない」(公明党幹部)との見方が支配的だ。軽減税率をめぐる自公の対立が激化すれば来年夏の参院選の選挙協力に影響する可能性も現実味を帯びそうだ。

2015年9月24日
舛添都知事「東京都の金が盗み取られている」  偏在是正措置の撤廃を要求

 東京都は9月15日、地方財源の偏在是正措置の撤廃などを求めた「共存共栄による日本全体の発展を目指して〜地方税財政に関する東京都の主張〜」とする文書をまとめ、公表した。同日に開いた記者会見で舛添要一都知事は、「東京から多額の財源が盗み取られている」と述べ、国の偏在是正策を強く批判した。
 現在、地方の財源偏在を是正するための措置としては、法人事業税の一部を国税化して財源の足りない自治体に配分する地方法人特別税や、法人住民税の一部を国税化して地方交付税として配分する地方法人税などがある。平成26年度税制改正大綱では消費税10%時に、地方法人税を拡大し、地方法人特別税は撤廃するものの代替措置を検討するとしている。このことから、都は現在3600億円程度となっている年間の減収が、消費税10%時には最大5800億円にまで膨らむと試算。「応益性の原則を形骸化させ、地方自治体間の対立を生み出しかねないもの」として、全面撤廃を要求している。
 また27年度税制改正で創設された、企業の地方移転に税優遇を設けた地方拠点税制を「東京を狙い撃ちにした制度」として、強く反発した。
 都は国が行っている偏在是正措置は「地方が抱える巨額の財源不足の解決にはつながらない」として、課税自主権の拡大や国からの税源移譲といった、全体的な地方税財源の拡充で偏在是正を図るべきだと主張している。また東京と各地を結ぶ観光ルートの整備や、東京で全国物産展を開催し地方の魅力を発信するなど、地域間の結び付きを強化することで共存共栄の関係を構築していくべきだと提案した。
 舛添都知事は会見で、「同じ志を持った自治体と連携しながら、不合理な偏在是正措置の撤廃、地方税財源の拡充を国に対して主張していきたい」と語り、国会議員などにも働きかけを行っていく方針を示した。

2015年9月17日
マイナンバー法人番号、10月22日から通知  登記のない法人や社団は11月

 自社の法人番号が分かるのは、10月22日以降となることが分かった。マイナンバーの法人番号の付番機関である国税庁は9月8日、法人番号の通知書を10月22日から地域ごとに分けて順次発送していくとするスケジュールを発表した。設立登記されている法人については10月22日から11月25日の間に7回に分けて普通郵便で発送される。設立登記のない法人や人格のない社団などについては、11月13日に簡易書留で全国一斉発送されるという。発送先は、設立登記法人は登記上の本店の住所、それ以外は税務署に提出されている申告書上の住所となる。
 通知書の送付に先立つ10月5日にはインターネット上に「国税庁法人番号公表サイト」が開設され、発送以降順次、(1)商号または名称、(2)本店または主な事務所の所在地、(3)法人番号――の3情報が公表されていく。ただし人格のない社団などについては代表者の同意が必要となるため、それらの事業者に対しては、通知書にあわせて、公表への同意書と返信用封筒が同封されるという。すべての法人番号が公開されるのは11月27日の予定となっている。
 法人番号は会社や法人、国の機関、地方公共団体などに付けられる13桁の番号で、厳重な情報管理を求められる個人番号とは異なり、公表して自由に利用されることを前提としているものだ。法人番号は「国税庁法人番号公表サイト」からパソコン、スマートフォン、タブレットで自由に検索・閲覧でき、利用にあたっての制限や罰則もない。
 国税庁は法人番号の導入で行政の事務効率化につながるほか、鮮度の高い企業情報が得られ、取引先情報の登録更新が効率化することや、複数部署やグループ各社を異なるコードで管理している場合に、法人番号で取引情報の集約や名寄せがしやすくなるとしている。

2015年9月10日
企業版ふるさと納税導入へ  法人住民税と法人税を一部控除

 菅義偉官房長官が検討方針を表明していた企業版ふるさと納税制度が、内閣官房の2016年度税制改正要望に盛り込まれた。菅氏は総務相時代に現行のふるさと納税制度の創設を主導しており、企業版にも強い意欲を示している。
 「企業と地域が一体となって雇用の場をつくることにも活用できれば。企業版のふるさと納税も何としても創設したい」。菅氏は8月25日、東京都内での講演で企業版ふるさと納税を地方の雇用創出につなげる構想を披露した。
 安倍政権は第189回通常国会で審議中の安全保障関連法案について、憲法学者から「違憲」との指摘が相次いだ影響などで支持率が低下している。16年夏の参院選に向け、地方創生の取り組みを加速させることで立て直しを図っていく構えだ。
 しかし、こうした政権の姿勢に対しては自民党内から「政局優先で政策の筋が悪い」と否定的な声も漏れる。
 年末の税制改正大綱策定に向け、菅氏と自民党税制調査会の綱引きが激しくなる可能性も捨てきれない。
 内閣官房の要望によると、企業版ふるさと納税は、内閣府から「効果が高い」と認定された地方創生事業を行う自治体に対し、企業が寄付をすれば法人住民税と法人税が軽減される仕組みだ。東京都や特別区など財政力が高い自治体などへの寄付は対象外とすることを検討する。寄付金の全額を税額控除するのではなく、一定部分は企業負担とする。
 ただ、税額控除の対象に国税の法人税が含まれたことで、財務省には税収減への懸念がくすぶる。企業が利益誘導を目的に寄付する自治体を選ぶことも予想され、具体的な制度設計では税収減や寄付行動のゆがみが生じないよう対策も求められそうだ。

2015年9月3日
空き家の自発的な撤去・改築に減税  国交省が改正要望

 国土交通省は、放置された空き家を所有者が自主的に撤去や改築をしたときに費用の一部を所得税額から控除する制度を、平成28年度税制改正要望に盛りこむ。税優遇を設けることで、全国的に増加している空き家への自発的な対応を促す。
 国交省の案は、所有者が空き家を撤去するか、居住用または賃貸用に改築やリフォームしたときに、かかった費用の1割程度を所得税額から控除するというもの。
 増加する空き家はゴミが放置されて衛生上問題があったり、一部が崩壊して周辺住民に危険を与えたりと全国で社会問題化している。政府は2015年5月に施行した「空き家対策特別措置法」で、空き家への対策に関する自治体の権限を強化し、特に危険のある「特定空き家」については行政代執行による取り壊しを認めるなど対策を進めている。しかし実際には所有者の特定に時間がかかることや事務負担の増加などから、どの程度の効果が出るかは未知数だ。
 また空き家は廃屋であろうと「住宅用地」と見なされ、固定資産税の課税額が更地の6分の1となることから空き家放置の要因になっているとして、27年度税制改正では、倒壊の危険性があるなど自治体が認定した「特定空き家」については、優遇措置の対象から除外する内容を盛り込んだ。
 国交省の要望は、こうした「ムチ」に加えて、税優遇という「アメ」を用意することで自発的な対応を促し、空き家対策をさらに加速させていくことが狙いだ。減税の対象となる空き家の範囲や減税額などは今後検討していくという。
 2013年の総務省の調査によると、全国の住宅に占める空き家の割合は13・5%、約820万戸に及んでいる。

2015年8月27日
平成26年度もワースト  消費税の新規滞納3,294億円

 国税庁が発表した平成26年度の国税滞納状況によると、消費税の新規発生滞納額が前年度比117・1%の3294億円であることが分かった。全税目の55・7%を占め、例年同様に税目別滞納額でワーストとなった。
 消費税以外の税目をみると、申告所得税1128億円(前年度比98・5%)、法人税674億円(同97・6%)、源泉所得税413億円(前年度比87・4%)、相続税363億円(同118・8%)、その他税目42億円(同86・3%)。消費税率が5%から8%に引き上げられたことが影響して消費税の新規滞納発生額が480億円増えたことで、全税目の新規発生額(5914億円)の前年度比を108%に押し上げた。平成9年度の消費増税時は翌年度にピークの消費税滞納が発生しており、今年度以降に滞納が増える可能性も考えられる。
 また、滞納者による自主的な納税や、差し押さえなどの強制執行で、滞納状況を完結した「整理済額」は前年度比98・8%の6681億円だった。
 国税滞納残高は前年度比6・7%減の1兆646億円で、ピークだった平成10年度(2兆8149億円)と比較すると全税目合計で38%にまで減少している。税目別では、源泉所得税が1877億円、申告所得税が3082億円、法人税が1267億円、相続税が917億円、消費税が3477億円だった。新規滞納発生額が前年度比で増加したものの、全税目で整理済額が新規発生滞納額を上回ったことで、結果として滞納残高を減少させることにつながった。

2015年8月20日
北九州市職員の所得税納付漏れ  1,000人分の4,150万円

 北九州市は7月31日、同市の職員約1000人分の所得税計約4150万円について納付漏れがあり、延滞税と不納付加算税約260万円が発生したことを明らかにした。原因は給与課の職員のパソコン操作ミスとして、延滞税などは税金でいったん負担した後、地方自治法に基づき、担当職員に請求することを検討するという。
 同市によれば、2014年11月に病院局の職員約1000人の給与支給事務を行った際、担当職員が誤って所得税の納付書に記載すべき所得税額を住民税の納付書に記載した。その後ミスに気付いたものの、訂正に必要な処理操作が不十分であったために反映されなかったという。上司も誤りの報告を受けていたが、適正に訂正されたかを確認していなかった。
 15年6月に入り、市会計室の調査により納付漏れが発覚。翌日に所得税を納付したものの、期限後の納税に課される不納付加算税と、延滞した期間に応じて課される延滞税が発生した。
 同市では09年にも職員・退職者の源泉所得税の納付漏れで約430万円の追徴課税を受けており、二度目となる納付漏れを「重大な過失」と判断。職員の責任の度合いに応じて損害賠償を求める方針を発表した。

2015年8月13日
銀行協会など4会が電子納税推進の要望書提出 金融機関へのインセンティブ求める

 全国銀行協会、全国地方銀行協会、信託協会、第二地方銀行協会の4会は、国税や地方税の電子納付推進を求める要望書を連名で取りまとめ、内閣情報通信政策監、総務省、国税庁などの関係省庁に提出し、7月28日公表した。
 要望書では、事前にe−Taxなどから申請をしておくことで、預貯金口座から直接税金が引き落とれる「ダイレクト納付」方式を、「税理士が中小企業等の国税の電子納付を代理で行う際の手続きが容易になるなど電子納付に適したもの」と評価。さらなる利用拡大に向けて、税理士や納税者への働きかけを強化するとともに、納税者や、それを取り扱う金融機関にインセンティブを付与することを提案した。
 またダイレクト納付では現在1件あたり10・8円の事務手数料が金融機関の収入となっているが、要望書では「国税庁のシステム等との間で電子データの処理を行う必要があり、これら事務処理にはコスト負担を要する」と主張。「収支相償の原則の観点から、その事務処理コストに見合った適正化をお願いしたい」として、事務手数料の引き上げを求めた。
 さらに2016年からスタートするマイナンバー制度に関連して、個人用システムのマイナポータルを国税と地方税のダイレクト納付に対応させるよう検討してほしいとした。
そのほか、自動車税の納付確認を全国に広げることや、従来の預金口座振替にかかる事務手数料の引き上げ、賦課税納付書の様式の統一などを求めた。

2015年8月6日
多摩信金がプレミアム商品券を職員らに優先販売  上限の5倍購入するケースも

 東京・立川市に本店がある多摩信用金庫が、八王子市が発行したプレミアム商品券を職員や顧客に優先販売していたことが明らかになった。同信金が八王子市から8000セットの販売を委託され、7月15日に販売を開始したもので、委託分のうち292セットにあたる計151万円分を、一般販売の事前に職員や顧客に売っていた。
 商品券は、政府が「地方創生」施策の一つとして自治体に配分した約1600億円の交付金を基にしたもの。全国で1709の市町村と30の都道府県が商品券や旅行券を発行するか、発行する予定としている。八王子市も、5千円で購入すると6千円分の買い物ができる「八王子市プレミアム付商品券」を発行し、市内の金融機関など30カ所に販売を委託していた。
 商品券を事前購入したのは、56人の職員と5人の顧客で、そのうち9人は1世帯あたりの上限である5セットを超える分を購入していた。なかには上限の5倍となる25セットを購入した職員もいたという。
 同信金は28日にホームページ上におわびの文章を掲載し、「(6月の)1次販売の際、商品券が売れ残ったことから、2次販売でも同様ではないかという軽率な判断があった」として、関係者に処分を行う方針を示した。事前販売された292セットのうち260セットはすでに回収し、未回収の32セットについてもプレミアム部分にあたる4万2千円を八王子市に返却する予定としている。

2015年7月23日
福井県が廃炉中の原発にも課税  条例改正目指す

 福井県は7月9日、県内の原子力発電所が廃炉作業中でも「核燃料税」を課税できるよう、条例改正を検討する方針を明かした。核燃料税は運転中の原発を対象とした地方税で、自治体が条例などで独自に定める法定外税の一つ。
 核燃料税は福井県が1976年に初めて設け、その後各地の原発所在地の自治体も相次いで導入した。課税対象は原発を持つ電力事業者となる。従来は運転中の原発にのみ課税されていたが、2011年の東日本大震災の後、停止中の原発にも課税できるよう条例が改正された。
 福井県内には現在10基を超える原子力発電所が立地しているが、そのうち関西電力美浜原発1、2号機(美浜町)と日本原子力発電所敦賀1号機(敦賀市)の廃炉が15年4月に決定した。廃炉計画が国に認可されて実際の作業が始まると、3基には核燃料税を課税できなくなる。廃炉が決まった3基による税収は年間でおよそ6億円とみられる。
 7月9日に開かれた県議会原子力発電・防災対策特別委員会で、税務課の担当者は全国初となる廃炉中の原発への課税へ条例改正を目指す考えを示した。「取れる方向で検討を進めていきたい」と意気込みを示したが、条例の施行には総務相の同意が必要で、電力事業者からの強い反発も予想されるため、実現するかは未知数だ。

2015年7月16日
税収21年ぶりの高水準を記録  消費増税が大きく影響

 財務省が7月3日発表した2014年度の国の一般会計決算(概要)によると、税収は前年度比4・9%(7兆177億円)増の53兆9707億円だった。これは1993年度(54兆1262億円)以来21年ぶりの高水準。ただ、財務省は増加分のうち5兆円弱は14年4月の消費増税によるものとみている。
 税目別にみると、所得税は前年度比8・1%(1兆2594億円)増の16兆7902億円、法人税は5・1%(5378億円)増の11兆316億円、消費税は48%(5兆1996億円)増の16兆289億円。
 所得税は好調な企業業績を受けて株式の配当や売買が活発だったことから、1月時点の見積もりから9732億円上振れした。上振れが6900億円に上った消費税は訪日外国人の増加が貢献した。訪日外国人向けの消費税免税店以外でも、飲食店、交通機関、宿泊施設などでの消費が活発で、上振れのうち1000億円が訪日外国人によるものという。
 一方、法人税は日本企業の稼ぎは海外子会社による部分も大きく、連結決算の好業績が税収に直接反映されにくくなっている。上振れの5186億円も一時的な要因が大きく、うち約2000億円は日銀が急激な為替変動による損失に備えて引当金を計上したことに伴うものだ。消費税の上振れが大きいのは1997年度の増税時に納付率が落ちたことを踏まえて財務省が慎重に見積もったためだ。
 上振れの総額は2兆2447億円。財務省はこのうち1兆円が一時的な要因によるもので、残り1・2兆円が今後の税収増を見積もるベースになるとみている。
今回の税収増を受けて、2014年度の国債発行額は見積もりより2兆円少ない38兆4929億円と6年ぶりに30兆円台に抑えられた。決算後に余る純剰余金は1兆5808億円となり、財政法に基づき、このうち少なくとも半分は国債の償還に充てられるが、残りについては16年夏に参院選を控えているだけに、政府・与党内で歳出圧力が強まりそうだ。

2015年7月9日
ふるさと納税返礼品  市川市で「Tポイント」打ち切り

 千葉県市川市は7月1日、ふるさと納税への返礼品として「Tポイント」を贈る特典を7月31日で終了すると発表した。総務省から「換金性の高いプリペイドカードに類する可能性がある」として自粛要請を受けていたもので、Tポイントカードが6月末からプリペイドカードとしても全国で利用できるようになったことを受け、取りやめを決定した。
 ふるさと納税制度では自治体は寄付者に対して返礼品を贈ることができる。しかし寄付金集めのために返礼品が高額化していることや、特産品と関係のない電子マネーを贈る自治体が出たことから、平成27年4月に、返礼品の価格表示や換金性の高いプリペイドカードなどを返礼として贈らないよう総務省から全国の自治体に通知を出していた。
 市川市は総務省の通知に対して「ポイントは換金できず、プリペイドカードでもない」として付与を続けていたが、6月30日から全国のコンビニエンスストアなどでTポイントカードが電子マネーとしても使えるようになったことを受け、打ち切りに踏み切った。大久保博市長は「Tポイントを取り巻く環境が変化した。継続は好ましくないと判断した」とコメントしている。
 Tポイントはカルチュア・コンビニエンス・クラブが展開するポイントサービスで、全国のファミリーマートやTSUTAYAで、ポイントを代金の代わりとして充当することができるもの。
 市川市では1万円以上の寄付についてTポイントを2000ポイント付与するサービスを平成25年7月にスタートし、寄付額は24年度の約320万円から、26年度には約4300万円へと急増していた。

2015年7月2日
改正地域再生法が施行  企業の地方移転費用や雇用増に税優遇

 税優遇を設けて企業の地方移転を促す改正地域再生法が、6月19日の参院本会議で可決、成立した。東京をはじめとする都市圏に企業が集中する状況を解消し、安倍政権の政策の柱である「地方創生」につなげることが狙いだ。
 同法では、東京に本社を置く企業が地方に本社機能を移転する場合や、すでに地方拠点を置いている企業が拠点機能を拡充する場合に税優遇を受けられる。移転計画の承認を受けた企業を対象に、承認から2年以内に取得した建物や附属設備、構築物について、最大で特別償却25%または税額控除7%を認めるものだ。ただし税額控除の上限は法人税額の2割で、取得する建物などの合計額が2千万円(中小企業は1千万円)以上であることが要件となっている。
 また、一定以上雇用を増やした企業に税優遇を認める雇用促進税制でも優遇が受けられる。現行制度では、適用年度および前年度に事業主都合の離職者がいないこと、前年度に比べて給与が一定以上増加していること、雇用保険一般保険者の数が前期に比べて5人以上かつ10%以上増加していることなどを要件に、雇用増加1人あたり40万円の税額控除が受けられる。これを、地方拠点での雇用増加については1人あたり50万円に引き上げるとしている。また10%以上雇用増加の要件を満たせなくとも20万円の税額控除を認める。大都市から地方に移転させる場合は、さらに1人あたり30万円の税額控除が上乗せされる内容となっている。
 同法をめぐっては、ファスナー製造の大手「YKK」が管理部門など本社機能の一部を生産拠点のある富山県に移管する予定としており、税優遇の適用を受けることを検討しているという。
 「地方創生」関連では、地域再生法と同じ日に、第5次地方分権一括法が可決成立した。4ヘクタールを超える大規模農地を宅地や商業地に転用する際に、これまで必要だった国の許可が不要となるもの。

2015年6月25日
国家戦略特区、東京都全域に拡大へ  沖縄はUSJ誘致検討

 政府は、東京23区のうち9区に限定している国家戦略特区の指定区域を、都内全域に拡大する方針を固めた。6月15日に開かれた東京都、神奈川県、千葉県成田市の国家戦略特区を議論する区域会議で舛添要一都知事の要望を受け、了承した。6月末にまとめる「骨太の方針」に盛り込む。
 都では2014年5月に、千代田、中央、港、新宿、文京、江東、品川、大田、渋谷の9区が特区エリアとして指定された。特区として指定されると雇用規制が緩和されて労働者が働きづらくなるとの指摘もあり当初の参加は一部にとどまっていたが、その後、台東区や豊島区などが相次いで戦略特区に取り組みたいという意向を示していた。
 桝添氏は会議で、指定区域を現在の9区から他区や多摩地域、伊豆大島などの島しょ部にまで広げるよう要請した。特区に指定されれば、都市公園法の規制などが緩和され、より柔軟な土地活用が行えるようになる。また酒税法の最低製造数量基準が適用されなくなるため、伊豆大島などでは特産品の焼酎を少量で製造・販売して観光客誘致に利用できるようになるという。
 会議では、すでに指定されている有楽町や日本橋兜町など6地域の再開発計画を特区事業として認定した。有楽町では旧都庁跡地に会議場を建て、国際的な会議の拠点としての機能を強化する。日本橋兜町では外国人起業家の誘致に向けた再開発を行う。特例を使うことで、都市計画の認可に必要な手続きが省略化でき、スピーディーに開発が行われるようになる。桝添氏は同日の会見で「いい方向に向かっている」と述べ、積極的に特区事業に取り組んでいく姿勢を見せた。
 一方、戦略特区を利用して、沖縄県ではテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の誘致を検討している。USJは進出先候補の一つとして同県本部町の国営海洋博公園を挙げているが、公園区域内に設けられる建築物の面積には上限があり、現行法のもとでは実現が困難となっている。県は戦略特区による規制緩和で要件をクリアし、人気テーマパークを誘致して観光客増加につなげたい思惑だ。5月30日には和泉洋人首相補佐官が現地視察を行うなど、政府も前向きな姿勢を見せているが、石破茂地方創生担当相は「現時点でUSJが具体的に(沖縄進出を)検討していることはない」として、慎重な見方を示した。

2015年6月18日
軽減税率検討委 当面開催見合わせ  対象品目などで協議進まず

 飲食料品の消費税率を低く抑える軽減税率をめぐる与党協議が早くも行き詰まっている。自民党の野田毅、公明党の斉藤鉄夫両税制調査会長が6月10日、国会内で会談し、軽減税率制度検討委員会の開催を当面見合わせることを決めた。
 軽減税率導入に伴う税収の目減りの穴埋め策をはじめ、対象品目の線引き、区分経理の方法といった課題について、協議が進展しないためだ。野田氏は会談後、記者団に「課題を乗り越える妙案が出ない。どっしり構えて検討していく」と語った。ただ、与党税協は平成27年秋をめどに取りまとめを目指すとの目標は変えない方針だ。
 財務省は5月下旬、対象品目を「酒類を除く飲食料品」「生鮮食品」「精米」とする試案を検討委に提示。品目の線引きについては食品表示法など既存の法律の基準を適用する案も示し、検討が進展した要素も見られた。ただ、食品表示法の基準では、刺し身は1種類のみなら生鮮食品だが、複数種類の盛り合わせは加工食品と分類され、軽減税率の対象品目を生鮮食品とすると後者は対象外。消費者の理解が得られにくいなど新たな壁に突き当たった。
 財務省試案によると、標準税率10%で軽減税率を8%とした場合、「生鮮食品」では低所得者世帯(年収176万円)が年間に支払う消費税は2325円少なくなる。しかし高所得者世帯(年収1077万円)はその倍の4938円も少なくなり、低所得者対策としての効率性を検証する必要も出てきた。
 公明党は対象品目をなるべく多くしたい意向だが、「酒類を除く飲食料品」の場合は年間の減収が1・3兆円に上る。これは消費税約0・5%分に相当し、財政健全化が求められる安倍政権が代替財源を確保する余力は乏しい。
 区分経理も事務負担が大きく、納税事業者の理解を得られる見通しは立っていない。財務省試案が商品ごとに税率や税額を明記した請求書(インボイス)導入の必要性を指摘すると、早速、経済界からは与党税協幹部に「容認できない」との意向が伝えられた。
 野田氏は検討委開催を見合わせる間、解決策を検討するよう財務省に指示した。軽減税率の制度設計は当面、水面下で進められるが、減収への懸念が強い自民党、財務省が主導することになりそうだ。

2015年6月11日
住宅資金贈与  新非課税制度をパンフで解説

 国税庁は5月29日、住宅取得等資金贈与の非課税特例の概略をまとめた全8ページのパンフレットをホームページ上に公表した。
 住宅取得等資金贈与の非課税特例は、住宅の新築や増改築を目的とする資金を子や孫などの直系卑属に一括贈与したときに、一定額まで贈与税が非課税になる制度。同様の制度は以前もあったが、平成27年度税制改正で非課税額の限度などが見直されており、国税庁のパンフレットでは平成27年1月1日〜31年6月30日の贈与に対するこの特例を「新非課税制度」と表現している。非課税額は家屋の新築などにかかる契約締結日や家屋の種類によって異なり、省エネ・耐震・バリアフリーなどの性能に優れた住宅については最大3千万円、それ以外の住宅については最大2500万円となっている。
 パンフレットでは「新非課税制度のイメージ」として、制度適用後の残額に対する贈与税の計算方法を図解。贈与を受けた住宅取得等資金から新非課税制度の非課税限度額をマイナスし、残った課税財産には、暦年課税では基礎控除(110万円)、相続時精算課税では特別控除(2500万円)が併用できると説明している。
 住宅資金のほか、教育資金や結婚・出産・育児資金を目的とした一括贈与の非課税特例が税制改正で拡充・創設された。贈与税の非課税特例の充実で、高齢者層から若年層への資産移転を促すとともに、消費の促進で経済の好循環につなげる狙いが政府にはある。

2015年6月4日
自公が軽減税率で本格議論  対象品目や導入時期で意見に隔たり

 消費税率を一部品目に限って低く抑える軽減税率の導入に向けた自民、公明両党の本格的な検討が始まった。しかし、対象品目や導入時期をめぐる考えの隔たりは大きく、両党は難しい調整を迫られそうだ。
 自民党の野田毅税制調査会長は5月22日、与党協議後の記者会見で、今秋の臨時国会に軽減税率関連法案を提出することに対して「それは難しいと思う」と否定的な見解を示した。
 与党は昨年末、消費税率10%への引き上げが2017年4月に延期されたことに伴い、17年度からの軽減税率導入を目指すことで合意。公明党は10%引き上げと同時の導入を目指しており、準備期間を考慮すれば最低でも臨時国会への法案提出にはこぎつけたい意向がある。しかし、野田氏は「『10%時』に導入すると申し上げている。それがすべて」とクギを刺した。
 財務省が対象品目として示している3試案は、@酒類を除く飲食料品、A生鮮食品、B精米。最新の試算では、軽減税率適用による1%当たりの減収額は、@が6600億円、Aが1700億円、Bが200億円だ。
 麻生太郎財務相は5月26日の記者会見で、「いずれの案も一長一短ある」と指摘。特に@の案は「(減収額の)ケタが大きすぎる。財源が埋まらない限りなかなか難しい」と述べ、なるべく広く軽減税率を適用したい公明党をけん制した。
 財務省試案では、@、Aは関連事業者の範囲が広く、適正課税の観点から、商品ごとに税率や税額を明記した請求書(インボイス)の導入が必要と指摘。経理方式の大幅変更で事務負担が増えるため経済界の反発が強く、これも軽減税率導入へのハードルとなりそうだ。
 公明党の斉藤鉄夫税調会長は27日の与党協議後、「課題をどう乗り越えていくか、それぞれ知恵を絞って議論しようとなった」と語るのが精一杯だった。

2015年5月28日
経済財政諮問会議で民間議員が提案  「高所得者の基礎年金は半額に」

 5月19日に開かれた経済財政諮問会議で、高所得の高齢者が受け取る基礎年金を半額にすることを検討すべきとの提案があった。民間議員が提出した社会保障分野での歳出抑制案に盛り込まれていたもの。ほかにも、後期高齢者制度についても高所得者に対しては相応の負担を求めていくべきとしている。
 民間議員の提言は、2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)赤字を解消する政府の目標達成に向けて、歳入歳出の両面での具体的なメニューを提示したものだ。高所得者への負担増に加え、安価なジェネリック薬品の普及率を高めることや、公共施設を積極的に再利用していくことなどを提案した。
 歳入面では、配偶者控除など人的控除の抜本的な見直しとともに、「資産格差が次世代の機会格差につながるべきではない」として、富裕層高齢者に対する相続税や贈与税の強化を提案した。だが相続税、贈与税ともに15年の1月から最高税率が引き上げられたばかりで、さらに高所得者を狙い打ちにして負担増を強いる案には反発の声が大きそうだ。
 なお、現在の民間議員は、東大大学院の伊藤元重教授、日本総合研究所の高橋進理事長、サントリーホールディングスの新浪剛史社長、経団連会長で東レの榊原定征会長の4人。

2015年5月21日
軽減税率3案を軸に与党協議再開  秋までに制度案取りまとめ

 自民、公明両党は5月下旬から、生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の導入に向けた与党協議を再開する。対象品目について「酒類を除く飲食料品」「生鮮食品」「精米」の3案を軸に検討する。2017年4月に予定される消費税率10%への引き上げに向け、今秋をめどに制度案の取りまとめを目指す。
 与党は昨年6月、軽減税率の適用を検討する飲食料品の分類案として「すべての飲食料品」から「精米のみ」までの8案を公表。自民党税制調査会が今年4月の幹部会で、このうち3案について比較的線引きがしやすいことなどから今後の検討の軸とする方針を決めた。
 財務省の試算によると、すべての飲食料品に軽減税率を適用すると、消費税率1%当たり6600億円の減収。3案の減収額は「酒を除く」が6300億円、「生鮮」が1800億円、「精米」が200億円と幅が大きい。
 自民党税調や財務省は軽減税率による税収減を懸念しており、対象品目を絞り込みたい考えだ。だが、「精米」のみに適用しても増税による負担増を緩和する低所得者対策としての効果が限られ、「誰にも評価されない」(財務省幹部)と消極論がある。「生鮮」を対象にする場合も「魚の干物は加工食品に該当するのか」など消費者に分かりやすい基準設定が課題だ。
 自民、公明両党は15年度の与党税制改正大綱に17年度からの軽減税率導入を目指す方針を明記しており、法整備などの準備期間を考慮すると今秋までに制度案を取りまとめる必要がある。ただ、導入に向けては対象品目だけでなく、複数税率に対応する事業者の経理処理のあり方など越えるべきハードルは多い。

2015年5月14日
沖縄徳洲会の特定医療法人の税優遇取り消し  選挙応援「公益性に反する」

 病院や介護施設などを経営する医療法人「徳洲会」グループの沖縄徳洲会が、法人税などを優遇する「特定医療法人」の承認を取り消されたことが分かった。4月29日に国税庁が承認取り消しを通知した。同会が2009年の衆院選などで行った選挙応援が、特定医療法人承認の要件である「公益性」に反すると判断した。
 同会は2009年の衆院選などで、グループの創設者でもある徳田虎雄前理事長の次男、徳田毅元衆院議員の応援に病院職員を運動員として派遣し、給料や経費を人件費などとして計上した。国税当局は、こうした支出を特定医療法人が負担することは虎雄氏への利益供出にあたるとして、医療法人徳洲会(大阪市)と沖縄徳洲会が支出した約3億6千万円の申告漏れを指摘していた。今回さらに特定医療法人の承認を取り消されたことで、同会には過去にさかのぼって優遇分の法人税と復興特別法人税を納付する義務が発生することになる。同会が2009年からの5年間で軽減された法人税額は約30億円に上るとみられる。
 「特定医療法人」は、「設立者やその親族に特別の利益を与えないこと」、「公益に反する事実がないこと」などを要件として、公益性の高い医療法人に対して、法人税の軽減税率19%(本則25.5%)を認めている。課税当局は、病院職員を選挙応援に派遣したことが「公益性」に反し、特定医療法人の資格要件を欠くとみなした。
同グループによる選挙応援をめぐっては、2012年衆院選で公職選挙法違反があったとして、徳田元議員の親族ら10人が起訴され、全員の有罪が確定している。

2015年5月7日
「極ZERO」国税庁115億円返還せず  酒税分類めぐり追納

 サッポロビールの商品『極ZERO』をめぐり、納め過ぎていたとして税金約115億円の返還を求めていた問題で、同社は国税庁から「返還しない」と通知されたことを4月28日明らかにした。この115億円は、サッポロが「第3のビール」として売り出した『極ZERO』に対して国税庁から「発泡酒にあたる可能性がある」と指摘を受け、酒税の差額分を自主的に追納していたもの。
 『極ZERO』は2013年に発売された。順調に売り上げを伸ばしていたが、14年1月に国税庁から「『極ZERO』が第3のビールではなく(税率の高い)発泡酒にあたる可能性がある」として製法を照会された。
 ビール類は原材料や製法の違いで税額が異なり、1缶350ミリリットルあたり、麦芽が主原料で麦芽比率3分の2以上の「ビール」は77円、麦芽比率3分の2未満の「発泡酒」は46・98円(麦芽比率が25%未満の場合)、発泡酒に蒸留酒を加えたり、麦芽以外を原料にしたりした「第3のビール」は28円となっている。
 国税庁の指摘を受けた時点で発泡酒であるとの断定はできなかったものの、確認に時間がかかれば追徴課税の額が膨らむと判断し、同社は14年6月に『極ZERO』の販売を休止。酒税の差額分115億円と、延滞税1億円を追加納付し、その後、発泡酒としてあらためて『極ZERO』を発売していたが、今年1月に入り、同社は社内調査で第3のビールである確証が得られたとして、国税庁に対して115億円の返還を要求したことから、注目が集まっていた。
 返還を拒否した理由は明らかにされておらず、同社は「内容を精査した上で、外部の専門家も含めて対応を検討したい」とコメントしている。今後、異議申し立てなどを行い、再度返還を求める可能性もあり、業界内外に衝撃を与えた『極ZERO』問題はまだ続きそうだ。

2015年4月23日
諫早湾干拓  国の制裁金は課税所得!?

 諫早湾の干拓事業をめぐる訴訟で、原告側の漁業者が国から受け取った制裁金に対して国税庁が所得税を課税する見解を示していることが4月14日分かった。漁業者側は所得にはあたらないと反発している。
 諫早湾をめぐっては、国による干拓事業のせいで海産物が獲れなくなったとして漁業者側が国を提訴し、福岡高裁が開門調査を命じる判決を平成22年に出している。しかし開門すると堤防内にある調整池の水が使えなくなるため、農業に被害が出ると主張する営農者らもおり、長崎地裁は開門差し止めの仮処分という逆の判断を下している。こうした経緯を受けて国が開門を行わないため、漁業者側が訴えを起こしたところ、佐賀地裁は国に制裁金の支払いを命じた。
 制裁金は26年6月から原告1人あたり1日1万円が支払われ、27年3月からは倍額の2万円が支払われている。支払われた制裁金は27年3月末時点で計1億3500万円に上るが、今後の司法判断次第では返納を求められる可能性があるため、漁業者側は制裁金を配分せずに弁護団長の個人口座にプールしているという。
 国税庁はこの1億3500万円が「漁業者の個人所得にあたる」として、昨年夏に漁業者側に所得税の納付義務があるとする見解を通知した。漁業者側は申告したものの、国の制裁金が所得にあたるとの判断には反発。弁護団の馬奈木昭雄団長は「脱税を回避するために申告はしたが、いずれ争うつもり」とコメントした。
 所得税法では損害賠償金などを非課税対象とする除外規定があるが、制裁金についての規定はない。

2015年4月16日
残業代ゼロ法案閣議決定  「朝型勤務」の企業が増加?

 政府は4月3日、労働基準法に関わる労働関連法の改正案を閣議決定した。労働時間ではなく成果によって賃金が決められる「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)」で、高度な技術や知識を持つ専門職の、一定以上の年収(1075万円以上)の人が対象の新制度だ。一部の年収の人に対しては、「企業は残業代を支払う義務はない」と国が明確に言い渡したかたちだ。政府は来春の施行を目指す。
 現在、労働基準法では1日の労働時間について「休憩時間を除いて8時間」と定めており、労働組合と協定(三六協定)を結んだときに限り、従業員に残業をさせることができる。そしてその超えた時間には割増賃金の支払いが義務付けられている。
 賃金は労働時間に対する対価だが、経団連をはじめ財界では功績度に対する対価と考える人も多い。政府はこの「残業代ゼロ法案」を成長戦略の柱として据えており、「有能な人材の能力が最大限発揮できる環境が提供される」としている。
 同案が施行されれば、企業は大きな経費削減ができるというメリットがあるが、成果主義に走る企業が増えることや、サービス残業が横行して、うつ病や過労死が増加することが危惧されている。
 無償で残業させるという動きの一方で、社員の健康維持や職場環境の整備から残業禁止に積極的に取り組む企業も増えているようだ。長時間労働を禁止することで、業務効率化や社員のプライベートの充実など、さまざまな相乗効果が期待できるという。
 たとえば、伊藤忠商事では、20時以降の残業を原則禁止し、残業は翌日の「朝型勤務」に転換している。朝5〜8時の時間帯の時間帯に割増賃金を支給しており、さらにその間に始業すれば朝食が提供されるという。その他、子育て世代を対象に週の1日を5時半退社にする企業や、夏場を限定にサマータイム制を導入する企業などもある。残業代ゼロ制度を活用して利益を上げるか、そもそも残業のない企業体質をつくるか、経営者に選択が迫られそうだ。

2015年4月9日
タックスヘイブン対策税制が緩和  法人税率「20%未満」に

 租税回避地(タックスヘイブン)を利用した企業の税逃れを防ぐ「タックスヘイブン対策税制」の発動基準が、現在の「20%以下」から2015年度には「20%未満」に緩和される。イギリスの法人税率が今年4月から20%に引き下げられたことに対応して、進出する企業に影響が出ないようにすることが狙いだ。
 タックスヘイブン対策税制は、税率の低い国や地域に実体のない会社をつくる企業に対して、過度な節税を防ぐことを目的とし、1978年に創設された。現在は、法人税率が20%以下の国に実体のない子会社を作ったと判定されると課税される。海外子会社の所得は通常、日本では課税されないが、この税制が適用されると日本での課税対象になり、日本の税率で課税される。
 イギリスが法人税率を21%から20%に引き下げると進出企業はタックスヘイブン対策税制の適用対象になる。特に、保険を売買するイギリスのロイズ市場に参加する企業への影響が大きいと判断し、適用基準を緩和することになった。

2015年4月2日
世帯あたり年間7万4千円  消費増税による負担増

 昨年4月の消費増税による家庭の負担増は昨年1年間で7万4221円にのぼることが日本生活協同組合連合会(日本生協連)の調べでわかった。
 生協組合員が1年間の家計簿を基に回答。家賃や学校教育費といった非課税取引を除いた消費支出をベースにして税額負担の推移がまとめられた。有効回答を寄せたのは608世帯。
 生協組合員1世帯あたりの26年の年間消費税額は24万893円。前年の16万6672円と比べて7万4221円も負担が増加したことになる。また、消費支出に占める消費税負担の割合は前年の3.65%から5.18%、収入に占める割合は前年の2.46%から3.6%へと大幅アップした。
 収入に占める税負担の割合を所得階層別にみると、各階層とも前年比で増えている。特に負担が大きく増えたのが、「収入400万円未満」の世帯の1.96ポイント増(3.48%→5.44%)。この調査で最も収入の高い層として設定した「収入1千万円以上」の世帯の1.02ポイント(1.92%→2.94%)とのひらきは大きいものだった。低所得世帯ほど負担率が高い傾向が鮮明となった。

2015年3月26日
貿易統計速報  赤字額減少 5カ月連続

 財務省が3月18日に発表した2月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4246億円の赤字となった。貿易赤字は32カ月連続。ただ、原油安の影響で輸入額が減少するなどして、赤字額は前年同月から47.3%減り、5カ月連続で縮小した。当面は原油価格の下落が輸入額を押し下げるとみられ、市場からは黒字転化を予測する声も上がっている。
 輸出は2.4%増の5兆9411億円で、6カ月連続の増加。米国向けなどの自動車(前年同月比8.8%)や半導体などの電子部品(同10.1%)などが伸びた。
 一方、2月に春節(旧正月)を迎えた中国向けの有機化合物などの輸出が控えられ、数量ベースでは2.1%減少した。一方、輸入は3.6%減の6兆3657億円となり、2カ月連続で前年を下回った。数量ベースでは4.5%増えたが、原油安の影響で原粗油(前年同月比54.8%減)、液化天然ガス( 同38.8%減)などの値下がりの影響が大きかった。
 地域別では、対米国の貿易収支が6317億円の黒字だった。自動車や建設用機械などの輸出が伸び、6カ月連続で増加した。対中国は7689億円の赤字。赤字は36カ月連続。衣類や金属製品などの輸入が増えた一方、自動車やその部品などの輸出が伸び悩んで赤字が拡大した。
 財務省は「原油価格の下落が輸入額の引き下げに相当効いている。輸出の持ち直し傾向は変わっていない」と説明している。
 市場関係者からは、「アジア向け輸出などの持ち直しが続くことや原油安の影響から収支の改善傾向が続く」(国内エコノミスト)として、3月以降に黒字へ転じるとの見方も広がってきた。

2015年3月19日
預金口座に付番  マイナンバー利用範囲拡大へ

 政府は3月10日、マイナンバー改正法案を国会に提出した。これまで番号の利用が認められていた納税や年金受給といった行政手続きに加えて、銀行口座への付番や、医療分野での予防接種などにも活用できるようにする。これまで政府はマイナンバー制度について、「税・社会保障・災害対策分野」の限られた行政手続きについて利用するとしていたが、制度開始を待たずに早くも「改正」され、利用範囲が拡大されることになる。
 マイナンバーは、個人は12桁の番号、法人は13桁の番号を割り振って、税金と社会保障の情報を一元管理する制度。今年10月に番号の通知を始め、来年1月から制度の運用を開始する。
 改正法案では、2018年から預金者に対して、金融機関にマイナンバーを申告するよう求める。告知への法的義務はないが、「義務がなければ普及しないではないかという指摘は承知している」(麻生太郎財務相)と言うように、進捗状況を見て21年をめどに義務化することも検討する方針だ。
 医療分野では、予防接種やメタボ検診などの情報を番号で管理できるようにする。一元管理することで、引っ越した際などに接種記録などを市町村間で引き継ぎやすくなるという。
 政府はマイナンバーの利用範囲を拡大することで、行政事務の効率化や、税金・社会保険料の公平公正な徴収につながるとしているが、国による個人情報の監視が強まることや、企業の事務負担が増えることを懸念する声も出ている。

2015年3月12日
医療機関 6割が消費増税分補てんできず  診療報酬改定に限界

 日本医療法人協会など12の医療団体が参加する日本病院団体協議会は2月27日、「医療機関における消費税に関する調査結果」とする報告書を発表した。それによると、2014年4月の消費増税による負担増を、診療報酬のプラス改定によって補てんできている医療機関は全体の半数に満たないことが分かった。6割が消費増税による経費の増加を完全には補てんできておらず、特に規模の大きい病院ほど補てん率が低いことが明らかになった。
 調査は、13年度までの実績値を基に、診療報酬による消費増税分の補てん状況を推計したもの。
来院者から病院に支払われる診療報酬は、消費税が非課税となっている。そのため、病院は一般企業のように、消費増税分を価格に転嫁することができない。
 一方で、病院が注射器・包帯などの備品を業者から仕入れたり、医療機械に設備投資したりする際には消費税がかかることから、病院の負担増をカバーするため、政府は消費税率が引き上げられるタイミングに合わせて、公定価格である診療報酬をプラス改定してきた。
 しかし今回の報告で、診療報酬の改定では病院の負担増をカバーしきれていないことが明らかになった。調査によると、増税分をどれだけ補てんできているかという質問に対して「50%未満」と答えた病院が全体の4.6%、「50%以上100%未満」と答えた病院が60.7%と、合わせて65.3%の病院で補てん不足が生じていた。逆に、補てん率が150%以上を超える病院も13・9%あり、個々の病院で大きなバラつきがあることが分かった。
 また病床規模別で見ると、400床以上を持つ大病院では、経費増額分に対して平均で70・5%しか補てんできておらず、規模の小さい病院に比べて補てんできていないケースが多かった。大規模病院では医療環境整備のための設備投資額が大きいことから、投資部分が直接的に補てんされていないことが理由とみられる。
 同日に開いた記者会見で協議会の伊藤伸一副会長は、「診療報酬の改定による補てんには限界がある」と述べ、現在非課税となっている診療報酬について「課税制度に改める必要がある」と改正を求めた。

2015年3月5日
空き家特措法が施行  固定資産税情報から所有者を特定

 全国で増加する「放置空き家」に対する国や自治体の取り組みを定めた「空家等対策の推進に関する特別措置法」が2月26日、一部施行された。崩落や倒壊の可能性のある危険な空き家に対し、固定資産税の課税情報を利用して迅速に所有者特定を行えるようになったほか、空き家に関するデータベースを整備し、自治体間の連携も取りやすくなる。また、所有者に対して改善を促したにもかかわらず無視して放置を続けた場合には、行政代執行による解体も認める内容が盛り込まれているが、これについては5月26日に施行される予定だ。
 施行に伴い、空き家対策に関する施策の枠組みを示す基本指針が発表されたことで、自治体は今後、指針に沿って対策計画を作っていくことになる。指針では、国や都道府県、市町村がそれぞれ担う役割や、具体的に対策に取り組む際の体制作りなどを定めている。
 どのような状態の家屋を「空き家」と判断するかについては、「建築物への人の出入り、電気、ガス、水道の使用状況」などを基準に客観的に判断することが望ましいとしている。さらに空き家が「放置されている」と判断する基準としては、1年間使用実績がないことを挙げた。これらの基準から「放置空き家」と判断された家屋については、自治体は固定資産税の情報を照会して所有者の特定にあたることができるわけだ。
 放置空き家が増加している理由には、固定資産税の制度上の問題がある。たとえ廃屋であろうと、家屋が建っている敷地は「住宅用地」と見なされ、敷地200u以下の住宅用地の課税標準額は、更地(固定資産税評価額)の6分の1となる。国はこの制度が空き家放置の主因になっているとみて、平成27年度税制改正法案では、倒壊の危険性があるなど自治体が認定した「特定空き家」については、優遇措置の対象から除外する内容を盛り込んだ。現在開催中の通常国会で成立する見通しで、国は特措法の施行と合わせて空き家対策を本格化させていく考えだ。

2015年2月26日
地方拠点強化税制  YKKが優遇第1号候補

 ファスナー製造の大手「YKK」が、企業の地方移転を後押しする地方拠点強化税制の税優遇適用第1号の候補に挙がっている。一部報道で明らかになった。同社は2011年頃から本社機能の分散や移転を進め、今後も管理部門など本社機能の一部を生産拠点のある富山県に移管する予定としている。現在開催中の通常国会で関連法が成立した後、適用申請をする見通しだ。
 平成27年度税制改正大綱に盛り込まれた地方拠点強化税制は、東京に本社を置く企業が地方に本社機能を移転する場合や、すでに地方にある企業が機能を強化する場合に税優遇を与えるもの。平成30年3月31日までに移転計画の承認を受けた企業を対象に、承認から2年以内に取得して事業の用に供した建物や附属設備、構築物について、東京など大都市圏から地方に移転させるケースでは特別償却25%または税額控除7%(承認が29年度なら4%)、すでにある地方拠点を強化させるケースでは特別償却15%または税額控除4%(同2%)を認める。その際、取得する建物などの合計額が2千万円(中小企業は1千万円)以上であることが要件となる。設備投資だけでなく、雇用の面でも優遇措置が創設された。地方拠点での雇用を増やした場合、一定の要件を満たすことで雇用増1人あたり最大50万円の税額控除を受けることが可能だ。東京・大阪・名古屋など大都市圏からの移転なら、さらに30万円の税額控除が上乗せされる。
 政府は地方移転企業への税優遇を拡充することで、首都圏への人口・企業の一極集中を是正したい狙いがある。11年の東日本大震災以降、リスクマネジメントの観点から機能を地方に分散させる企業が出てきており、税優遇の内容次第では今後さらに企業の地方移転が増える可能性もある。

2015年2月19日
軽減税率  対象品目など検討スタート

 自民、公明両党の税制調査会は2月9日、生活必需品などの消費税率を低く抑える軽減税率について協議する検討委員会の初会合を開いた。2017年度の開始を目指し、今秋までに具体案を取りまとめる方針。これまでの与党協議では、品目の絞り込みや経理の方法などで考え方の違いなどが表面化しており、議論が決着する道筋は不透明だ。
 委員長の野田毅・自民党税調会長は「軽減税率制度の具体的な制度案を検討し、与党税制協議会に提案する」とあいさつした。会合で野田氏は、必要な資料作成を財務省に指示したことを明らかにした。検討委で議論するおもな論点は、(1)軽減税率の適用対象となる品目、(2)事業者などの経理処理の方法、(3)減収が見込まれる財源の穴埋めのあり方――の3つが挙げられる。
 軽減税率をめぐっては、10%への消費増税が17年4月に延長されたことを受け、与党税協が「17年度からの導入を目指す」ことで一致している。ただ、低所得者の負担軽減策として幅広い品目を対象に加えたい公明党と、税収の減少で財政健全化に懸念を示す声の多い自民党の間には依然、意見の隔たりがあるのが実情だ。
 また、対象品目や経理方法については、業界団体のヒアリングを通じて様々な意見が出ている。対象品目は昨年6月の議論で、「全ての飲食料品」「生鮮食品のみ」「精米のみ」など8案が示された。対象品目の線引き次第では、対象から漏れた業界の強い反発も予想される。経理処理も、事務コストの負担が増えることから、中小事業者を中心に導入そのものに反対する声が相次いでいる。
 今後難航しそうな調整に、ある税調幹部は「最後は政治決断だ」と気を引き締めている。

2015年2月12日
サッポロ“極ZERO”  酒税115億円返還要求

 サッポロビールは1月29日、納付済みの約115億円の酒税を返還するよう国税庁に求めたことを明らかにした。同社は2013年に「極ZERO」を税率の低い「第3のビール」として売り出したが、国税庁から第3のビールに該当しない可能性を指摘され、追加の酒税分115億円を自主納付していた。その後、社内調査で第3のビールである確証が得られたとして、今回の返還要求に踏み切った。
 ビール類は原材料や製法の違いで税額が異なる。1缶350ミリリットル当たりで、麦芽が主原料で麦芽比率3分の2以上の「ビール」は77円、麦芽比率3分の2未満の「発泡酒」は46・98円(麦芽比率が25%未満の場合)、発泡酒に蒸留酒を加えたり、麦芽以外を原料にしたりした「第3のビール」は28円となっている。
 サッポロは昨年1月に国税庁から「極ZEROは第3のビールではなく発泡酒にあたる可能性がある」として製法を照会された。その時点で発泡酒であるとの断定はできなかったものの、確認に時間がかかれば追徴課税の額が膨らむと判断した同社は、6月に「極ZERO」の販売を休止。その後、発泡酒としてあらためて「極ZERO」を発売した経緯がある。
 今回返還を要求しているのは自主納付した酒税分の115億円で、販売休止にかかる損失や再発売にかかった費用は含まれていない。発売から半年で約360万ケースを売り上げるなど同社の主力商品に成長しつつあった「極ZERO」に待ったをかけられた同社の受けたダメージは大きいものと予想され、国税当局の対応にビール業界内外から注目が集まっている。

2015年2月5日
軽減税率 検討委員会設置  与党間に溝で難航必至

 生活必需品の消費税率を抑える軽減税率の導入をめぐり、自民、公明両党は税制協議会(会長・野田毅自民党税制調査会長)の下に具体的な制度を検討する委員会を設置することを決めた。2月上旬に初会合を開く。焦点は対象となる品目の選定や実際に納税する事業者の経理負担に対する配慮など。今秋をめどに制度案をまとめる。
 軽減税率について、自公両党は昨年末の総選挙公約や税制改正大綱の中で「消費税率10%時の導入」「17年度からの導入を目指す」との方針を明記してきた。
 検討委員会は軽減税率導入に向けた具体的な制度設計を進める場となり、委員長には野田税調会長、副委員長には公明党の斉藤鉄夫税調会長が就任。自民党の額賀福志郎税調小委員長や公明党の北側一雄副代表ら両党の税調幹部計8人がメンバーとなった。
 同協議会は昨年6月、飲食料品を対象にした場合の案を公表し、「全ての飲食料品」から「精米のみ」までの8案を示した。ただ、政府・与党内には新聞や書籍など飲食料品以外も対象にすべきだとの声がくすぶっており、委員会では対象品目の選定をさらに進めていく。
 軽減税率をすべての飲食良品に適用すると消費税率1%あたり最大6600億円の税収が減ると試算され、安定財源をどう確保するのかも課題となる。スーパーなどの事業者の区別経理に混乱を招かない措置も検討する。
 軽減税率の導入に積極的な公明党は検討会の結論を受けて秋の臨時国会にも関連法案を提出したい考えだが、自民党内には慎重論が根強く、法案を提出できる時期は見通せない。もともと軽減税率は消費税を10%に引き上げる際の低所得者への負担軽減策として検討が始まったが、適用範囲を広く設けたい公明党と税収減を抑えるために適用範囲を絞り込みたい自民党との主張にはなお隔たりがあり、議論は波乱含みとなりそうだ。

2015年1月29日
日本政策投資銀行 民営化先送り  東日本大震災で存在感復活

 財務省と経済産業省が日本政策投資銀行と商工組合中小金庫の完全民営化を先送りする方針を発表した。経済危機などに対処する資金供給に万全を期すのが狙いだ。2022年度までとしていた保有株式の売却方針は撤回され、通常国会に提出する改正法案では株式の保有期限は明示しない。安倍政権はリスクマネーを供給する政策金融の存在を重視しており、小泉政権が目指した「官から民へ」の改革は大きな転機を迎えた。
 政府の出資比率は政投銀100%、商工中金46%。現行法は15 年度から5〜7年かけて政府保有の株を全て売却し、完全民営化することを定めていた。新たな方針では、地域経済の活性化や災害対応のための資金を供給する「危機対応業務」の実施を両機関に義務付け、株式保有を通じた政府の関与を残すことにした。
 政府は15年度、政投銀に650億円を追加出資し、成長資金を供給するファンドを創設する。ファンド業務は20年度までの5年間実施することとし、その間は2分の1超の株式を、その後も一定期間は3分の1超の株式を保有する。商工中金についても当分の間は必要な株式を保有することにした。
 完全民営化の先送りは今回が3回目。政府が完全民営化に消極的なのは、リーマン・ショックと東日本大震災を通じて政策金融の役割が見直されたことがある。政投銀がリーマン・ショック以降に実施した危機対応融資は総額約5.7兆円に達し、その存在感を高めてきた。「官の復権」で民業圧迫の懸念が残るが、政府は法改正と同時に「民業圧迫につながらない新たな仕組み作り」を検討することにしている。

2015年1月22日
地方財政計画 一般財源 過去最高61兆円超え  財政健全化との両立に課題

 政府は1月12日、地方自治体の予算編成の指針を示す2015年度地方財政計画を決定した。自治体が自由に使える一般財源の総額は前年から1.1兆円増え、過去最高の61兆5千億円となる。麻生太郎財務省と高市早苗総務相の大臣折衝で固めた。
 一般財源は地方税収や地方交付税、臨時財政対策債などを合計した、使い道の制約を受けずに活用できる地方の収入見通し。
 歳入面では、輸出大企業を中心とする業績回復や、消費税8%への増税の影響などで、地方税収が増加すると予想した。また、リーマンショック後の09年に導入した地方税への上乗せ措置「別枠加算」についても、廃止を検討していたが、減額した上で維持した。さらに政府は「まち・ひと・しごと創生事業費」を新設し、1兆円を計上した。地方交付税については、昨年度から1兆円減の16兆8千億円となった。
 政府はアベノミクスが掲げる「地方創生」を後押しするため、地方への予算配分を手厚くする構えだが、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の対国内総生産(GDP)比を20年度までに黒字化するという財政健全化目標へのめどは立っていない。今後歳出削減の対象が地方へ向く可能性もあり、地方創生と財政健全化との両立の道はいまだ見通せていないのが実情だ。

2015年1月15日
法人実効税率3.29%引き下げ  赤字企業 2年で1600万円の増税に

 2015年度与党税制改正大綱で法人税改革の具体策が決定された。企業の所得にかかる法人実効税率(標準税率34.62%、東京都35.64%)を15年度に2.51%、2016年度までで計3.29%引き下げる一方、赤字法人にも課税する法人事業税(地方税)の「外形標準課税」の拡充などで代替財源を確保することが柱だ。財務省の試算では、外形標準課税の拡充で黒字企業は平均700万円の減税の恩恵を受ける一方、赤字企業は平均1600万円の増税となる見通しで、企業に赤字体質からの脱却を促す改革の意図が鮮明になった。
 外形標準課税は、資本金1億円超の企業を対象に従業員への給与総額などに基づき赤字法人にも課税するもので、2015、16年度で従来の2倍に拡充する。一方、法人事業税のうち所得にかかる税率(所得割)は引き下げる。
 財務省は今回大綱で決定された法人事業税の改革について、企業の規模別の影響を試算した。
 資本金1億円超〜10億円以下の中堅企業1万7410社のうち、赤字の4818社は平均300万円の増税となる一方、黒字の1万2592社は平均200万円の減税で、全体では平均100万円の減税となる。中堅企業は、2016年度まで2年限定で一定の条件を満たせば増税額が2分の1になる経過措置が導入されるため、負担はさらに軽減される見通しだ。
 5868社ある資本金10億円超の大企業では、赤字企業は平均5500万円の増税、黒字企業は平均1900万円の減税で、全体では100万円の増税となる。
 いずれのケースも黒字企業が減税となるのは、外形標準課税の納税額の増加以上に、所得割の減税効果が大きいためだ。
 資本金1億円以下の中小企業には外形標準課税は適用されないため、法人事業税改革による負担の増減はない。

2015年1月8日
預金口座にマイナンバー適用  2018年から「任意」登録

 政府は2014年12月19日に、国民1人ずつに割り当てる税と社会保障の共通番号(マイナンバー)を2018年度から銀行の預金口座にも適用する方針を固めたことが一部報道でわかった。既存の口座、新規口座に本人情報の一部として銀行に登録するよう国民に呼びかける。1月中旬にとりまとめる2015年度税制改正大綱に盛り込む。また、今年1月に招集予定の通常国会にマイナンバー改正法案を提出し、4月頃の成立を目指す。