2015年12月17日
保険の契約者貸付制度  いざという時の備えとして

 企業経営をしていると、緊急にまとまったお金が必要になる時が出てくるものだ。資金調達に苦労した経験がある経営者は少なからずいるのではないだろうか。何かの場合に備えて、資金調達できる手立てを準備しておきたい。
 そこで検討したいのが、契約している生命保険の解約返戻金を担保に保険会社からお金を借りる「契約者貸付制度」だ。保険は自分が支払った時点で保険会社のお金となるため、引き出す場合は「契約者貸付」として保険会社からお金を「借りる」ことになる。保険会社は契約者の申し出により、解約返戻金の70〜90%の範囲内で貸付を行う。もちろん、保険会社や保険の種類によって内容は異なる。
 保険の種類は、(1)終身保険、(2)定期保険、(3)養老保険、(4)学資保険、(5)個人年金――であれば、貸付を受けられる。
保険でお金を借りることは、(1)銀行などの融資と違い、審査がなく支払いが早い、(2)お金の使い道が自由、(3)借りても個人の信用情報に乗らない、(4)金利が低い――などのメリットが挙げられる。
 ではデメリットとして考慮しておかなければならないことはどのような点だろうか。
まず、保険会社から借りたお金の貸付利率が設定され、その利率は複利で適用される点だ。
例えば、3%の利率が適用されている貸付制度を使って、1年間に100万円借りたとする。貸付金を1年間返済せずにいると、翌年には103万円になり、その翌年には103万円の3%が付加され、約106万円、さらにその次の年は109万円になる。返済額は年々増加することになるのだ。
 また、解約返戻金の範囲内であれば、何度でも貸付が可能であるが、返済しないで返済額が解約返戻金を超えてしまうと、保険そのものが失効してしまうこともある。
 さらに契約時期によっては、貸付利率が高い保険もあるので注意したい。バブル期に加入した保険は予定利率が5%を超える保険もあるからだ。利率が高い保険は、その分返済額も多くなる可能性があり、貸付を受ける前に利率がいくらなのかを確認する必要があるだろう。
 加えて、貸付を受けてから返済せずにいると、返済額が大きくなるわけだが、学資保険や養老保険など満期がある保険では、祝い金から返済額を差し引いた金額が祝い金として給付されることになるので注意したいところだ。

2015年12月10日
バリアフリーの所得控除   5年間で最大62・5万円

 内閣府の高齢社会白書によると、2015年に日本に住む人の4人に1人が65歳以上の「高齢者」となった。そして25年には75歳以上の人が2千万人を突破すると見られている。
 今後、高齢化に対応するために自宅をバリアフリーに改修する家庭が増えることが容易に想像できる。しかし、改修するといっても、内容によっては大きな出費がつきまとう。
 そこで、階段の設置・勾配の緩和、浴室の改良、トイレの床面積の増加など、自宅のバリアフリー改修を行うと、確定申告の際に所得税の控除を受けることができる制度がある。17年12月末までに居住を開始することが条件となるが、改修の際には大いに活用したい。
 控除の金額は、自己資金で工事を行ったのか、それとも借入して工事を行ったのかで控除額は変わってくる。
 自己資金で工事を行うと、標準的な工事費用(最高200万円)の10%が所得税から控除される。この標準的な工事費用は、増改築等工事証明書で確認できる。控除は1回のみだ。
 一方、費用を借り入れて工事をしたときは5年間にわたり控除でき、バリアフリー工事のための借入金額の2%と、ローン残高のうちバリアフリー以外にかかる工事費の1%を合わせた額が控除される。5年間の最大控除額は62・5万円となる。
 控除を受けることができるのは、(1)50歳以上の人、(2)要介護または要支援認定を受けている人、(3)要介護または要支援認定を受けている親族と同居している人、(4)障害者、(5)障害者と同居している人、(6)65歳以上の親族と同居している人――が対象となっており、所得金額が3千万円以下に限られることも注意したい。
 改修工事を行う自宅は、(1)工事完了後6カ月以内に居住、(2)工事後の自宅の床面積が50平方メートル以上で2分の1以上が対象者の居住、(3)対象者の居住部分の工事費用が工事総額の2分の1以上、(4)賃貸住宅でない――のすべての要件を満たす必要がある。
 また、介護保険からも、介護を目的としたリフォームへの支給がある。手すりの設置や床の段差解消などの工事が対象となり、その費用が各20万円までなら、9割(18万円)が支給される。この介護保険のリフォームへの支給は、前出のバリアフリー工事の所得税控除と併用が可能となっている。

2015年12月3日
市販薬1万円以上購入で控除  厚労省が検討

 厚生労働省と財務省は、年間1万円以上の市販薬を購入したときに、1万円を超える部分を課税所得から控除する新制度の導入を検討している。早ければ年末にまとめる2016年度税制改正大綱に盛り込み、来年度中にも法案を提出する。
 現在ある医療費控除は、病院での受診料や薬の購入費用が年間10万円を超えたときに、超過部分が所得から控除されるものだ。しかし市販薬の購入費用だけでは10万円を超えることは難しく、病院に行く人のみが利用しやすい税優遇となっていた。
 厚労省は医療費控除とは別に市販薬のみを対象とした税優遇を設けることで、軽い症状の人に市販薬での治療を促し、医療費抑制を目指す。所得控除には限度額を設けるとともに、薬局から受け取る領収書などを添えての確定申告を義務付ける方針だ。対象となる市販薬の範囲については今後検討するとしている。
 制度が導入されれば、医療費控除に比べて手軽に所得控除が受けられるようになる。一方で、本来なら病院にかかるべきところを市販薬で“我慢”してしまうケースも想定される。また本来確定申告の不要なサラリーマン層からは手続きの煩雑さから利用を敬遠されることも考えられるなど、慎重な制度設計が必要とされそうだ。

2015年11月26日
「認定証」提示で負担軽減  医療費が高額すぎて払えない

 健康保険証を提示せずに受診すると、医療費の全額を支払わなければならないのはご承知の通りである。保険証があれば病院や診療所の窓口で支払う負担割合は、70歳未満なら3割となっている。
 だが、保険証提示による3割負担といっても、長期療養や入院、手術となると相当な出費になることもある。そこで患者の負担が極端に増えないようにするために高額療養費制度が設けられている。5つの所得区分に分け、1か月の自己負担額が設定されている。
 しかし、この高額療養制度は還付金が手元に戻るのが申請して約3カ月後で、一時的な負担は大きなものになり、医療費や手術代が払えないなど資金繰りに困る人がたくさんいた。
 そこで2007年4月に導入されたのが「限度額適用認定証」である。70歳未満の人がこの認定証を保険証と合わせて病院などに提示すると、1カ月の窓口での支払いが自己負担限度額までとなる。認定証が導入されたときは入院時の医療費にしか認められていなかったが、12年4月から外来でかかった医療費に関しても使用が認められるようになっている。
 この認定証はその人が高額療養費制度の5つの所得区分のどこにあたるかを記載した証明書になっており、認定証があれば還付金が戻ってくるのを待たなくても、最初から限度額までを支払うだけでいいことになるのだ。病院など医療機関に支払う金額のうち、食事代、保険外選定療養などは対象外になるので注意したい。
 適用されるのは認定証を提示した月からとなるので、入院前もしくは入院日の同月内に手続きをしなければならず、月が変わると前の月の認定は受けられないので注意が必要だ。認定証は自己申請となっており、加入しているそれぞれの保険組合に自ら発行してもらう必要があるので、時間が要することも考慮しておいたほうがいいだろう。

2015年11月19日
メタボでジム通い  医療費控除の対象になる!

 メタボリックシンドロームは運動不足が主原因と言われている。メタボ解消のためにスポーツジムやフィットネスクラブに通いたいが、お金がかかってしまうことでジム通いに二の足を踏む人は思いのほか多い。
 だが、ジムの利用料が医療費控除の対象になることを知ったら、その考えを改めるかもしれない。健康診断の結果、メタボと診断され、医師の処方箋に基づいて運動療法を実施すれば、ジムの利用料金を医療費控除として税務署に申告することができるのをご存じだろうか。
 医療費控除を申請するまでの流れを見ていくことにする。
 健康診断で高血圧症や高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患などの疾病があると診断され、かかりつけの医師などから「運動療法処方箋」を書いてもらう。これは、「医師の指導に基づいて治療をします」という証明になるものだ。
 そして、厚生労働省から指定された「指定運動療法施設」で処方箋に基づいて運動療法を実施する。運動療法ができる施設は「厚生労働大臣認定健康増進施設」として全国にあるフィットネスクラブや健康保険組合の施設などがあるが、医療費控除を受けられるのは指定運動療法施設のみであることを注意したい。
 運動療法は、おおむね週1回以上の頻度で、8週間以上にわたって行われていることが条件となる。かかりつけの医師などから健康改善のためのアドバイスや経過観察を受け、「運動療法実施証明書」の確認を受け、確定申告書を提出するという運びになる。確定申告書提出時は、実施証明書と合わせて運動施設での利用料金の領収書も提出することも覚えておきたい。

2015年11月12日
最高で2000万円まで非課税  夫婦間のマイホーム贈与

 長年、家族で住み続けてきたマイホームという資産を贈与したとき、ある制度を利用することで数千万円単位のお金が非課税になることをご存じだろうか。結婚して20年以上の夫婦であれば、居住用の不動産を贈与しても、条件を満たせば2000万円まで無税になる。贈与税の基礎控除110万円と合わせて2110万円までは贈与税がかからない。贈与は夫から妻でも、妻から夫でも、どちらでもかまわない。
 この制度は、生前に相続財産を贈与することが可能なので、相続税が課税される人にとっては利用して損はないはずだ。
 制度を利用できるのは、(1)結婚して20年以上の夫婦、(2)居住用不動産または居住用不動産の購入資金、(3)贈与を受けた配偶者は贈与を受けた翌年の3月15日までに居住用不動産に居住し、以後も引き続き住み続ける見込みがある、(4)贈与を受ける配偶者から過去に制度の適用を受けていない――の条件を満たしていなければならない。
 では、3500万円の夫名義の自宅を妻に贈与した場合、贈与税はどうなるのか。
 制度を利用しないで贈与すると、(3500万円−110万円)×55%〔贈与税の税率〕−400万円〔控除額〕で、1464万5000円。
 制度を利用すると、{3500万円−(2000万円+110万円)×45%〔贈与税の税率〕}−175万円〔控除額〕で、450万5000円。
 つまり、1464万5000円−450万5000円の1014万円が“お得”ということになる。
 また、この制度にはさらなるメリットがある。仮に、夫が病気で長く生きられないことが分かってから財産を贈与したとする。本来は死亡日から逆算して3年以内の贈与は、相続財産の価額が相続財産に加算され、相続税の対象になる。ところが、この制度では相続財産に加算されない。
 この制度を利用するなら、マイホームの売却による特別控除制度を利用する方法もある。マイホームを夫婦の共同名義にした上で売却すると、譲渡益から夫婦それぞれ3000万円まで、合計6000万円の特別控除を受けることができることも覚えておきたい。

2015年11月5日
人間ドックは全額自己負担だが…  補助金が出る組合も

 健康診断は、会社勤めであれば健康保険・健保組合で、自営業者であれば国民健康保険で、安く受けることができる。そのため、「年に1回は健康診断を受けている」という人は多いのではないだろうか。
 だが、健康診断は身体の基本的なことしか調べないので、重大な病気を発見できないこともある。「もしかしたら重い病気になっていないか?」と不安に思う人もいるだろう。そういう人のために用意されているのが人間ドックだ。
 医療は「保険診療」と「自由診療」に分けられるが、人間ドックは自由診療で行われることになり、費用は全額自己負担になってしまう。ただし、人間ドックで検査した結果、重大な病気が発見され、診断に引き続いて治療することになると、人間ドックにかかった費用も医療費控除の対象になる。
 人間ドックは種類によって費用に差があり、一般的には日帰りコースが3万5000円〜5万円、1泊2日コースが5万円〜8万円、脳ドックが3万円〜6万円、陽電子を放射してがん細胞を早期に発見するPETドックが8万円〜20万円ほどが目安になる。
 個人で支払うことを考えれば、高額な出費となるので、できるかぎり費用は抑えたい。健康保険組合によっては、補助金を出しているところもあるので、加入している健康保険組合に問い合わせをしてみるといいだろう。例えば、埼玉県鴻巣市では、1人につき費用の7割(限度額2万7000円)を助成している。
 公的健康保険の補助金が出ない人は、加入している保険会社で人間ドック割引サービスがないかどうかチェックするといいだろう。ある保険会社では、人間ドックの料金が最大30%割引で受けられるサービスもある。病院も独自の割引を実施しているところもあるので、高額だからといってあきらめずに費用を抑える方法を各自検討したいところだ。

2015年10月22日
私立高校の就学支援  経済的負担を軽減

 公立高校と私立高校では教育費にどれだけの差があるのだろうか。文部科学省の調査結果によると、公立高校は平成22年度から始まった高校授業料無償化制度によって「授業料」がゼロ。そして入学金や修学旅行費用、教科書費などの「その他の学校教育費」が3年間で約69万円。また学習塾や習い事などの「学校外活動費」が46万円ほどになっている。合計すると3年間で、約115万円の教育費が必要になる計算だ。
 一方、私立高校はどうだろうか。授業料は3年間で約71万円、その他の学校教育費で約145万円、学校外活動費73万円となり、3年間合計で290万円ほどのお金が必要であるという。文科省のデータでは、公立と私立では180万円ほどの開きが出ることになる。また私立高校は入学金だけでなく、寄付金や施設費の支払いを求められる学校もあり、さらに出費が嵩むことが考えられる。
 そこで政府は「家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」必要があるとして、私立高校に通う保護者に対しても平成26年度から就学支援金が支給されることになった。対象は、年収910万円以下の世帯で、年額11万8800円が支給される。また年収が250万円以下の世帯は年額29万7000円の補助が受けられるようになった。

2015年10月15日
葬儀費用の給付制度  手続きをしなきゃ「損」

 葬儀費用に悲鳴を上げる人は少なくない。ある中小企業経営者は父親の葬儀の総額を目にして驚きを隠せなかった。葬儀業者から受け取った「葬儀明細書」は、約300人の会葬者に対する「飲食」「香典返し」など一切合切の葬儀の経費で500万円を超えていたからだ。父親の突然の死で混乱状態のなかで、葬儀費用が妥当なものかどうかを考える余裕はなく、葬儀業者から提示された見積額に同意するしかなかった。
 誰もが葬儀費用を少しでも抑えたいと考えるはずだ。いくつかの手続きを行えば葬儀費用が多少ではあるが戻ってくるので、覚えておきたい。
 まず国民健康保険加入者(被保険者)が死亡すると葬祭費が支給される。自治体ごとに金額は異なり、約1万〜7万円。自治体によっては、他の名目で補助金が出る場合もあるので、確認しておきたい。
 健康保険組合など、国民健康保険以外の社会保険では、以下の3ケースで給付が可能だ。
 まず、加入者が亡くなったときはその加入者によって生計を維持していた人に埋葬料が一律5万円支給される。健保組合によっては埋葬附加金として埋葬料とは別に数万円受け取れることもある。
 次に身寄りのない加入者が亡くなったときは、実際に葬儀を行った際には埋葬費として葬儀代や火葬代などの実費に対して、最大5万円まで支払われる。前出の「埋葬料」と区別した言葉を使用している。
 そして加入者の家族が亡くなった場合は、加入者に家族埋葬料として一律で5万円が支給される。
 また、業務上の理由で死亡した場合は、健康保険からでなく労災保険から埋葬料が支払われることになる。葬祭料の支給対象は、必ずしも遺族とは限らないのがポイントだ。会社が社葬として葬儀を行ったのなら、会社に対して葬祭料が支給されることになる。31万5000円に給付基礎日額の30日分を加算した額が給付基礎日額の60日分に満たなければ、給付基礎日額の60日分となる。給付基礎額とは原則として労働基準法の平均賃金に相当する額としている。要するに、最低でも給付基礎日額の60日分は支給されるということだ。労災保険は葬儀をした翌日から2年以内に申請手続きをすることと定められている。。

2015年10月8日
中小企業が受けられる“特典”  軽減税率、少額特例……

 資本金1億円以下の会社は「中小企業」としてさまざまな税優遇を受けられる。多くの中小企業は大企業と比べて資金力に乏しいのは事実であるのだから、少しでもその負担を減らすために“特典”が設けられているわけだ。
 法人税の軽減税率を適用できるのも中小企業の特典だ。各事業年度の所得金額のうち、800万円以下の部分の税率は15%(本則19%)に軽減される。また、中小企業は留保金課税が適用されない。
 原価償却資産に関する「少額特例」も中小企業だけに認められている。取得価額30万円未満の減価償却資産の全額即時損金算入が認められる制度で、比較的使い勝手の良い特例といえるだろう。
黒字・赤字にかかわらず課税される外形標準課税は、中小企業は対象外となる。
 税務上の欠損金を繰り越して翌年度以降の課税所得と相殺できる欠損金繰越控除制度でも中小企業には優遇措置がある。繰越控除をする事業年度の所得金額の80%までを控除できる制度だったが、平成27年度税制改正で27年4月1日〜29年3月31日に開始する事業年度は65%に、29年4月1日以降は50%にまで引き下げられた。しかし中小企業にはこうした所得金額制限が設けられていない。
 給与支給額を増加させた企業がその増加額の1割を税額控除できる所得拡大促進税制や、雇用者数を増やした企業が増加雇用者数1人当たり40万円の税額控除が受けられる雇用促進税制も同様に、中小企業と大企業とでは区分けされており、中小は有利な取扱いとなっている。
 さらに、交際費の特例でも中小企業は大企業とは区別される。中小企業は飲食費の50%を損金算入できるほか、交際費の800万円までを損金に算入することもできる(選択適用)。

2015年10月1日
支払金額と乖離したインボイス記載  重加算税は課税されるのか?

 課税庁が決定した更正処分に不満があるときは、納税者は異議申し立てなどを経たのち、国税不服審判所にその課税判断が正しいかどうかを審査請求することができる。2014年10月、ある業者に下された重加算税の処分をめぐって、審判所が裁決を下した。
 貨物輸出者から送付されたインボイス(発送する荷物の内容を説明する書類)に記載された貨物の価格が本来の価格と比べて著しく低かったことで、インボイスを基に申告をしたエスカレーター部品輸入事業者のA社は、結果的に消費税を過少申告することになった。これに対して国税当局は、A社が「事実の隠蔽」をしたとして消費税の更正処分と重加算税の賦課決定処分を行った。
 国税当局の判断は、正しい価格が記されていないインボイスとは別に現実の支払い額が記されている価格明細表があったにもかかわらず、貨物の輸入申告手続きを依頼した通関業者にそれを渡さなかったことが隠蔽にあたるというものだ。重加算税は、納税者が国税の課税標準や税額の計算の基礎になる事実の全部または一部を隠蔽・仮装して納税申告書を提出したときに課税される(国税通則法6条)。A社の事例は事実の隠蔽の有無が争点となった。
 最終的に審判所はA社の主張を支持した。その理由としては、A社の認識は、通関に必要な書類はインボイスを含む4種類だけで、価格明細表の提出が求められていることは知らなかったことが挙げられている。さらに、A社は調査担当者に対して、インボイスだけではなく課税価格表も提示していた。事実の隠蔽があったとは認められず、国税当局は処分を取り消すべきであると判断した。

2015年9月24日
医療費負担を減らしたい!  高額医療・介護合算制度

 65歳以上の人口が3000万人を突破した。そのうち約600万人が介護保険の要介護認定を受けている。高齢になると、医療費と介護費が同時期に必要になるため、高額で支払えないのではないかと心配する人も多い。だが、健康保険と介護保険を自己負担額が一定額を超えると還付を受けられる制度がある。
 70歳以上の医療費の自己負担は1割だが、それでも重い病気などで治療が長引けば負担は大きくなる。そこで家計の負担を軽減できるように、一定額を超えると払い戻しを受けられる「高額医療費制度」がある。一般的な70歳〜74歳の人なら月4万4000円、所得が月額28万円以上の人でも月8万少々の自己負担すむ。この制度では、病院でいったん高額の治療費を払い、後でお金が還ってくることになっているが、あらかじめ国民健康保険組合や健保組合の窓口で「限度額適用認定証」をもらっておくと、病院で自己負担限度額までを支払えばよく、高額のお金を準備する必要がない。
 また、介護費でも「高額介護サービス費支給制度」がある。国の介護保険制度では、1カ月の自己負担額には所得に応じた限度額が設けられており、介護費が高額になると超過分を払い戻してもらえる。
 さらに同一世帯のなかに、1年間に高額の医療費をかかった人と高額の介護費がかかった人がいれば、それらの合算に対して限度額を超えた分を還付してくれる「高額医療・高額介護合算療養費制度」があるのも覚えておきたい。この制度は同一人物でも還付が可能だ。例えば、70歳〜74歳のいる一般世帯で年間56万円以上、高所得者(月額28万円以上)で年間67万円以上かかった分は還付される。一般世帯が1年間に医療費、介護費合わせて70万円かかったとすると、70万円−56万円で、14万円が還付されることになる。

2015年9月17日
家を建てるなら「認定住宅」  平成31年6月までが“お得”

 住宅購入にあたっては、誰もが“お得”に買い物がしたいと思うはずだが、意外と利用されていないのが、住宅購入にあたっての二つの「認定制度」だ。これは、長期間にわたって使用でき、構造や設備など一定の基準を満たしている「長期優良住宅」と、二酸化炭素を抑制した建築物である低炭素建築物の条件を満たしている「低炭素住宅」で、いずれも条件を満たした場合に限り、優遇措置を受けられるというものだ。なかでも特に大きな優遇措置は住宅ローン減税の適用とフラット35の金利引き下げだろう。
 住宅ローン減税は、10年にわたり控除率1%を所得税から差し引かれる。平成31年6月30日までは一般住宅では最大控除額は各年40万円で総額4000万円だが、長期優良住宅、低炭素住宅の認定住宅であれば100万円上乗せされ、最大控除額は500万円。
また、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」で借りる場合、認定住宅であれば金利引き下げ期間が当初10年間で0・6%引き下げとなる「フラット35S(金利Aプラン)」が利用できる。

2015年9月10日
30万円までなら即時償却OK  中小企業だけの税優遇を使いこなせ!

 年末にまとめる税制改正大綱に向けて、各省庁が改正要望をまとめている。そのなかで、経済産業省は中小企業を対象とした「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の期限延長を求めた。
 この特例は、取得価額が30万円未満の資産であれば、全額を損金算入して即時償却を認めるというもの。少額資産の減価償却については、20万円未満のものは3年間で均等償却、10万円未満のものは即時償却が求められているが、30万円まで一気に償却ができるのは中小企業だけに認められた特権だ。2017年度末までの時限措置となっているが、経産省はこの制度が中小企業にとっては欠かせないものだとして2年間の延長を求めている。
 というのも、13年度にこの特例を活用した中小企業は46万社。そのうち従業員5人以下の企業が39%、6〜20人以下の企業が36%と、従業員数が少ない会社ほど制度の恩恵に預かれているというデータが出ているのだ。
 では実際にどのような物を買ったときに制度を利用しているかというと、圧倒的にパソコンが多い。単価が20〜30万円というモデルが多く、ちょうど制度に合った価格帯であることが理由だろう。制度を適用したうち5割がパソコンを占めている。そのほかでは、生産用の機械や、事務机セット、エアコン、コピー機など、オフィスになくてはならないものに利用されているようだ。中小企業しか使えない税優遇は、余さず活用していきたいところだろう。なお、この特例の適用は合計300万円までとなっていることには注意したい。

2015年9月3日
地震保険料が来秋値上げへ  加入が必要かチェックを

 地震や津波で壊れた住宅や家財の損害を補償する個人住宅向けの地震保険料が、全国平均で約2〜3割程度値上げされそうだ。保険料の値上げは2014年7月に15・5%引き上げられたばかりだが、早ければ16年秋の新規契約分から適用されるとみられており、加入を考えている人は早めに準備を進めた方がいいかもしれない。
 地震保険制度ができたのは、1964年の新潟地震がきっかけだ。当時大蔵大臣だった田中角栄氏は被災者が生活に困る様子をみて、地震保険の必要性を痛感したという。そのため地震保険は公的な要素が強く、政府と損保会社が共同で運営している。巨大地震で広範囲に被害が発生し、保険会社だけでは保険金を支払うことができなければ、支払えない部分を政府が負担する。損保会社の支払いリスクを国がバックアップしているところが他の損害保険と違うところだ。
 地震保険は単独で加入できず、必ず火災保険とセットで加入しなければならないのが特徴。年間の地震保険料は、@居住する建物がどの都道府県にあるのか、A建物がどのような構造でできているのか――の2つで決まる。地震による被害のリスクによって、47都道府県は1等地から3等地の3区分に分類され、保険料は3等地が最も高い。住宅の構造は、大きく分けて非木造と木造に分類される。地震保険金額1000万円で、木造戸建住宅であれば、東京都内なら年間3万2600円だが、福岡県なら1万600円と地域によって差が生じている。マンションの場合は非木造となり、木造戸建住宅よりも耐震性が高いと判断されるため、東京都であれば、年間保険料は2万200円と安くなる。
 注意したいのは、火災保険に入っていても地震保険に入っていなければ補償されないケースがあるということだ。地震で発生した火災は、火災保険の対象外となる。自分の家が火を出さなくても延焼に巻き込まれる可能性は否定できない。隣家と密接している住宅であれば、地震保険に加入しておきたいところだ。
 戸建住宅を建てたばかりで、住宅ローンがかなり残っている人は、地震で全壊になると家を失い、借金だけが残るという事態になりかねない。そういう人はまとまった現金が入る地震保険に加入するべきだ。もしくは被災によって仕事を失うおそれがある経営者なども地震保険は有効になるだろう。
 一方で住宅ローンがほとんど残っていない、もしくはローンも完済し貯金に余裕がある人は地震保険に入る必要性はあまりないかもしれない。またマンションで、耐震基準を満たしており地震による被害が想定しにくい場合も加入しなくてもいいだろう。ただし、管理組合で地震保険に加入していなければ、マンションに損害が出たとき追加で負担する必要に迫られるケースも考えられるので、管理組合が保険に加入しているかどうか、チェックしておきたい。

2015年8月27日
金融商品の課税方式統一  申告分離課税で税率20%に

 株式や投資信託、国債や社債などの金融商品の運用によって得た利益にかかる税金の仕組みが、来年1月から変更される。
 上場株式や株式を組み込んだ投資信託は、給与などの特定の所得と分けて税金を計算し、確定申告を行う「申告分離課税」で売買益や配当に課税されているが、個人向け国債や社債といった公社債の利子や公社債で運用する投資信託の分配金は「源泉分離課税」となっている。また公社債を償還前に売却して得た利益は非課税、償還時に出た利益は総合課税の雑所得となり、最大50%課税される。
 これらが来年1月から一律20%の申告課税制度に統一され、投資家の負担が軽減されることになった。これにより確定申告が必要になるが、株式や投資信託の取引を行うための「特定口座」を利用すれば、税額の計算や源泉徴収手続きを金融機関が代行する仕組みであることも覚えておきたい。特定口座は株式と投資信託が対象だったが、来年からは債券も加わることになる。
 また、変更されるのは税率だけではない。異なる金融商品同士で利益と損失を相殺し、課税対象金額を圧縮する「損益通算」の範囲も広がることになる。

2015年8月20日
マイナンバー利用範囲の拡大へ  金融口座へ紐付けて管理

 すべての国民と法人に番号を付番して社会保障や税の情報を管理するマイナンバー制度が、いよいよ2016年1月にスタートする。制度の運用開始に先立って行われる個人番号の通知まではあと2カ月を切り、待ったなしの状況だ。
 マイナンバー構想は当初、税、社会保障、災害対策という3分野の限られた行政手続でのみ利用されるものとしてスタートしたが、政府はマイナンバーを公的サービスのさまざまな手続きや、将来的には民間の商業サービスにまで拡大することを計画し、検討している。政府の姿勢を反映し、2015年度税制改正でも利用拡大に向けた内容が盛り込まれた。
 銀行などの金融機関は、マイナンバーから利用者の預貯金情報を検索できる管理体制の構築が義務付けられた。銀行口座にマイナンバーを紐付けできるようにする改正番号法と合わせ、口座情報を漏れなく把握することができるようにする。政府はマイナンバー制度のメリットとして行政手続きの簡素化による国民の利便性向上をうたっているが、今回の改正については大綱で「マイナンバーが付された預貯金情報を税務調査において効率的に利用できるようにする観点から」とあるように、国民にとってはメリットがあるどころか監視が強まるだけの見直しと言える。
 預金口座へのマイナンバー付番は当面は法律上の義務ではないものの、銀行からは、口座に付番するのでマイナンバーを教えてください、と言われることになる。断れば「何かやましいことがあるのか」と下手な勘繰りを招くことにもなりかねず、半ば実質上の義務化と言えそうだ。
 こうした預金口座への付番を含めたマイナンバーの利用拡大を盛り込んだ改正番号法は、現在開催されている通常国会で成立する見通しとなっていた。しかし6月に日本年金機構から101万人分にも上る個人情報が流出した問題を受け、公的機関の情報管理体制への不信が増大し、審議はストップ。安保法案などによる国会審議の停滞もあり、番号法の今国会での成立は不透明な状況だ。
 ただ甘利明経済再生担当相が「導入スケジュール自体を変更することはない」というように、マイナンバー制度が16年1月にスタートすることは間違いない。すべての企業が制度開始に向けての体制整備を急がなくてはならないだろう。

2015年8月13日
マイナンバー通知 住民票の住所以外で受け取るには?

 2016年1月からの制度スタートに向け、15年10月からいよいよマイナンバーの個人番号の通知が始まる。マイナンバーは国内に住民票を持つすべての人に付番され、番号が記載された通知カードは、簡易書留で、10月から11月のあいだに住民票の住所宛に送付されるという。
 しかし世の中には、さまざまな理由から住民票の住所に住んでいなかったり、あるいは住民票にある住所以外のところで通知カードを受け取りたかったりする人もいるはずだ。そうした場合、どのようにして通知カードを受け取ればよいのだろうか。
 総務省は、東日本大震災による被災者、DV(家庭内暴力)やストーカー行為、児童虐待の被害者、長期療養のために医療機関などに入院している人たちのために、住民票以外の居所を通知カードの送付先とするための手続きをホームページ上で公開している。同省では、こうした事情のある人たちを「住民票の住所で通知カードを受け取れないケース」として挙げ、一定の手続きによって実際の居所で通知カードを受け取ることができるようになるという。通知カードの受取時期に長期出張が重なる単身者なども例として挙げている。
 手続きには現在居住している居所情報の登録が必要で、そのため「通知カードの送付先に係る居所登録申請書」を市役所等でもらうか、インターネット上からダウンロードする。手に入れた申請書には氏名、生年月日のほか、住民票に登録されている住所と、実際に居住している住所を記入する。そして、「住所地において通知カードの送付を受けることができない理由」も記入する。
震災などにより避難しているのか、DVなどの被害者であるのか、医療機関に入院しているのかなど、該当するチェックボックスにチェックを入れ、そのいずれにも該当しないときには、自由記入欄に「具体的な状況」を記載する。その内容によって申請が却下されることがあるのかは、総務省のホームページでは触れられていない。
 記入した申請書は、15年8月24日から9月25日までに、住民票のある市区町村に持参または郵送する(政令指定都市の場合は、区役所に持参または郵送)。その際、申請書以外に、運転免許証など申請書の本人が確認できる書類、公共料金の領収書など実際に居住していることを証明する書類が必要だ。代理人による申請の場合は加えて代理権を証明する書類と代理人の本人確認書類も添付しなければならない。
 マイナンバーは自分の税や社会保障の情報に紐付けられ、番号自体が重要な個人情報となる。そのため、こうした手続きを行って確実に本人が受け取りたいところだ。
 なお、今回の手続きの対象となっているのは「番号通知カード」だが、東日本大震災の被災者、DVなどの被害者は、16年1月以降に発行を受けられる「個人番号カード」についても現在居住している市区町村で受け取ることができるとしている。。

2015年8月6日
法人税などさまざまな税優遇  吉本興業が124億円減資で「中小企業」に

 テレビ番組の制作や劇場運営などを手掛ける吉本興業が、資本金を125億円から1億円へ減資することが7月29日、分かった。6月に開いた株主総会で承認をすでに得て、9月1日付で実施する。同社は平成27年3月末時点で利益剰余金がマイナス140億円、税引前損益が29億円の赤字となるなど、苦しい経営状態が続いていた。
 資本金が1億円以下の企業は税法上、「中小企業」として扱われる。法人税は本則25・5%だが、中小企業には800万円以下の所得については19%の軽減税率が認められた上で、現在は租税特別措置法によってさらに低い15%の税率が適用されている。また業績にかかわらず従業員数や資本金に応じて課税される外形標準課税も、中小企業は課税対象に含まれない。そのほかにも欠損金の繰越控除制度や雇用促進税制など、多くの税目で中小企業には優遇が用意されている。
 そのため、27年5月には大手電機メーカーのシャープが99%の減資をして資本金を1億円にする計画を進めていたが、宮沢洋一経産相が「税制優遇を利用するために減資するというのは違和感がある」とコメントするなど批判が相次ぎ、最終的に税法上の「大企業」として扱われる5億円への減資に落ち着いた経緯がある。
 吉本興業は今回の減資について、「中長期的な視点で、資金を有効な投資に振り向けていくため」として税優遇目当てとの見方を否定したが、社会的に名前の知られた有名企業が中小企業税制の適用を受けることに対しては反発の声が上がりそうだ。

2015年7月23日
税務調査を事前にスルー!  でもなかなか普及しない書面添付

 税務調査に移行しないように税理士が事前に防いでくれることがある「書面添付制度」に関して、国税庁が今後も普及に努めることが7月10日公表の「国税庁レポート2015」で示された。しかし、制度の利用割合は法人税申告のうち1割に至っていない。なかなか納税者に制度が浸透しない背景には、税理士の多くが制度活用に消極的であるという事情がある。
 書面添付制度は、税理士が一定の書式に基づいた書面を税務申告書に添付すると、税務当局は税務調査の事前通知をする前に税理士に意見を述べる機会を与えなければならないというもの。税務当局は書面添付を「税務調査の省略を前提とした制度ではない」としているが、税理士の意見陳述で疑義が解消されれば調査に至らず、納税者は調査官からのプレッシャーにさらされなくて済む。
 税務当局は税務行政の円滑化・簡素化の観点から書面添付制度の普及に積極的な姿勢を見せている。国税庁の1年間の活動やトピックをまとめた「国税庁レポート2015」でも「この制度(書面添付制度)を尊重し、一層の普及・定着に努めています」と記している。しかし、その意気込みは書面添付制度の利用者数に十分反映されているとはいえない。
 財務省がまとめた実績報告によると、平成25年度の法人税申告全体のなかで税理士が関与している申告は87・9%で、このうち書面添付されていたのは8・1%だった。8%を超えたのは初めてであり、平成13年の書面添付制度改正で事前通知前に税理士に意見陳述の機会が設けられるようになってから添付割合は毎年上昇している。
 しかし、平成13年の制度改正時に日本税理士会連合会(日税連)は利用率の目標を「10%」と設定しており、その目標にはまだ届いていない。また、税務当局も8・1%はまだ低調な利用割合と捉えている。財務省は毎年、国税庁のさまざまな活動実績について「S+、S、A、B、C」5段階で評価しているが、書面添付制度の普及・定着に向けた取り組みが含まれている「税理士業務の適正な運営の確保」の最新評価は「A」だった。財務省はA評価の理由について、「税理士会への説明会等の評価」と「税理士会等との綱紀監察をテーマとした協議会等の開催回数」の2つの業績指標の目標値を達成したこと、税理士会との連絡協調を推進しつつ税理士に対する的確な指導監督を実施していることを高評価としたものの、「引き続き書面添付制度における添付書面の記載内容の充実および添付割合の向上を図っていく必要があること」という“道半ば”の項目がある点を総合的に勘案して「A」にしたと総括している。
 日税連や国税当局の思惑のようには書面添付の普及が進んでいない背景には制度活用に消極的な税理士が多いことが関係している。
 日税連はホームページ上の制度説明のなかで、「(税理士にとっては)余分な仕事のようで煩わしい」「書面を添付した結果、思いもよらない責任を追及されたらかなわない」「一度提出して、その後やめたら、痛くもない腹を探られないか」といった税理士の懸念を紹介している。こうした懸念は制度の実態を税理士が分かっていないためであると日税連は見ている。
 書面添付活用の有無にかかわらず、申告書の適正性を確認するのは税理士に求められる役割でもある。また、税理士が確認した範囲を添付書面に記すことで、申告書に対する税理士の責任範囲が明確になるという税理士側のメリットもある。税務調査に移行しないように事前にブロックできれば、税理士は納税者の信頼を得ることもできる。手間の増加やリスク面の不安から制度活用に二の足を踏むだけではなく、また「税務調査の立ち会いこそ納税者に税理士のありがたみを感じてもらう絶好の機会なのだから、調査を省略する意味はない」といった“税理士本位”の考え方をするのではなく、納税者にとって必要かどうかを考えて制度活用の是非を判断することを顧問税理士には望みたいところだ。そして、書面添付に消極的な税理士は、顧問先企業の申告書に虚偽やミスがあったときのリスクを感じている可能性がある。経営者がしっかりとした会計意識を持つことも制度を活用するためには不可欠だろう。

2015年7月16日
2016年1月に制度スタート  マイナンバービジネス続々

 2016年1月の運用スタートを控え、マイナンバーに関連したビジネスが次々に立ち上げられている。従業員の個人番号の管理代行や、情報漏えいに備えた新しい保険商品など、さまざまな分野で新たな収益を狙う。またこれを機会に顧客層を拡大し、ほかの自社サービスに誘導したい思惑もあるようだ。
 マイナンバーは特定の個人情報を含むため、取り扱いにあたっては厳格な安全措置をとることが企業には義務付けられている。しかし中小企業では人員的な事情から十分な対応が難しく、番号通知開始まで3カ月となってもほとんどの企業が対策できていないのが現状だ。また大企業でも、規模が大きいほど対応にかかる費用が増大するため、今後の運用にかかる人的、金銭的なコストも含めれば自社での対応には限界があると考える企業も多い。
 そうした需要を商機と捉え、国内IT大手は次々と「マイナンバー管理代行サービス」を打ち出している。富士通、NECの両社は15年に入ってすぐにマイナンバー関連サービスを発表。マイナンバー法に対応したシステム構築に加え、個人番号の登録、保管、申告業務までを幅広く代行する。さらに従業員へのマイナンバー研修まで行うサービスも実施するという。
 7月には日立製作所が参入を発表したことで、国内のIT大手3社が出そろった。日立はマイナンバー収拾から保管、廃棄、法定調書の印刷代行までをカバーする。e―Taxでの税務申告にも対応しているという。そのほか、キヤノン、NTTデータなどもそれぞれマイナンバー対応サービスを発表しており、マイナンバーを一大商機と捉えたIT企業の競争はしばらく続きそうだ。
 一方、損害保険会社大手の損保ジャパン日本興亜は、情報が流出した際の被害を補償する新たな保険を発売する。企業が管理する従業員の個人番号が不正アクセスやウイルスによって流出したときに、システム改修費、損害賠償の訴訟費用、情報が流出した社員の金銭的被害などを対象にするという。マイナンバー制度の開始を間近に控えて企業ではサイバー攻撃に対する危機感が高まっており、今後もそうしたニーズを見込んだ保険商品が各社から発売されることが予想される。

2015年7月9日
戦略特区でエンジェル税制導入  個人投資家に税優遇

 ベンチャー企業に投資する個人を対象に税優遇を設けた「エンジェル税制」が、2015年度税制改正で拡充された。同税制は投資したときと株式を売却したときの2段階で優遇を受けられることが特徴となっている。
 投資時点で受けられる優遇内容は、創業3年未満の中小企業への投資を対象として投資額から2千円を引いた額をその年の総所得金額から控除できるものと、創業10年未満の中小企業への投資を対象として投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除できるものの2種類があり、それぞれ要件が異なる。例えば創業3年未満の企業を対象とした特例を適用するためには、対象の企業が大規模法人の子会社でないことや、風俗営業などを事業として行う企業でないことに加えて、直前期までの営業キャッシュフローが赤字であることが求められる。資金繰りに苦しむベンチャー企業にとっての救い主、つまり「エンジェル」であることが、税優遇を受けるための条件となるわけだ。
一方、創業10年未満の企業を対象とした特例なら、大規模法人の子会社でないなどの共通項目はあるものの、こちらでは試験研究費が収入金額の一定割合以上を占めていることなどが主な要件となっている。どちらの要件も満たしている場合は総所得金額や他の株式譲渡益などの状況からメリットの大きい方を選択できるが、総所得金額の控除では「総所得金額×40%と1千万円のいずれか低い方」という上限があることに注意したい。
 次に、売却時に受けられる優遇は、売却によって生じた損失を他の株式譲渡益と相殺できるものだ。売却した年に相殺しきれなければ、翌年以降3年にわたって順次相殺することもでき、投資した企業が上場しないまま破産や解散などをして株式の価値がなくなったときも、同様に損失の相殺や繰越ができるようになっている。投資時と売却時の2段階での税優遇を設けることで、ベンチャー企業への投資を促進したい思惑がある。
 15年度税制改正では、安倍政権が推進する「国家戦略特区」構想を踏まえ、特区内にある企業を同税制の対象とする内容が盛り込まれた。対象となるのは@高度な医療技術の研究開発を行う企業、A付加価値の高い農林水産物の効率的な生産技術を研究開発する企業、B農地法などの特区特例の適用を受けた特例農業法人、C雇用の創出に関わる事業を行う企業―の4種類。@〜Bは創業5年未満、Cは創業3年未満の中小企業が対象となる。それぞれ設立してからの年数に応じて、研究者の数、利益率、試験研究費の割合、設立時従業員数など税優遇を受けるための要件が細かく分かれているので気を付けたい。
 また6月19日に成立した第5次地方分権一括法では、エンジェル税制で対象企業に投資を行われたかどうかなどの確認事務が、国から都道府県に移譲された。自治体が主体的に地域のベンチャー企業を支援に関わることで、地方創生につなげていくことを促す狙いがあるとみられる。

2015年7月2日
平成26年分確定申告  特定支出控除の利用2千件

 個人が支出する通勤費や転居費、帰宅旅費、研修費、資格取得費などを給与所得控除に追加するかたちで所得から控除できる「特定支出控除」の平成26年分(27年確定申告)の利用者は2千人だった。
 特定支出控除は、サラリーマンの支出のうち一定のものがいわば「必要経費」と認められ、所得から控除できる制度。対象となる支出は、通勤費、転勤に伴う引っ越し費用、研修費、一定の資格取得費、単身赴任者の勤務地と自宅の往復旅費、職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服費、職務に通常必要な交際費など。図書費や衣服費、交際費は65万円が上限となる。適用されるのは、年間給与収入が1500万円以下であれば給与所得控除額の2分の1、1500万円超であれば定額125万円をそれぞれ超えた部分の金額となっている。
 平成25 年分から対象になる支出が拡充されるとともに、適用判定の基準になる支出金額が引き下げられている。これを受けて、制度改正前の5年間(20年〜24 年分)は6件、9件、3件、4件、6件という利用状況だったが、25年分は1600件と急増。26年分は2千人とさらに増え、制度が多少なりとも根付いてきたことがうかがえる。
 ただし、特定支出で最も多かったのは、25年分から拡充された「資格取得費」であり、資格取得が職務上必要な職場の人でなければ現状も制度の対象者になりづらいようだ。
 また、適用できたとしても、25年分の確定申告から給与等の収入金額が1500万円を超える人の給与所得控除の額が245万円の定額に変更されているため、以前と比べてその人の負担が減ったとは言い切れない。24年以前は、収入金額が1千万円超の場合の給与所得控除額は収入金額の上昇に合わせて上限なしで増加した。しかし、25年分から245万円が上限になったことで、一定の収入がある人にとっては大きな増税となった。上限額は今後さらに引き下げられることとなっている。

2015年6月25日
還付金の未払いミス多発  税制改正で計算方法見直し

 地方自治体が住民税などを徴収しすぎた場合に、納税者に還付する際の利息となる「還付加算金」の計算方法が2015年度税制改正で見直された。還付加算金をめぐっては、全国で計算ミスによる納税者への未払いが多発し、問題となっていた。
 還付手続きでは、納税者の申告に基づいて所得税が減額され、その後、住民税などの地方税も還付される。還付金には支払い決定までの日数に応じて、金額に7・3%を乗じた利息が発生するが、現行の制度ではその計算方法が個人事業主と給与所得者で異なっていた。個人事業主などの場合、「所得税の減額通知のあった日の翌日から1カ月後」が計算の開始日となるのに対し、給与所得者の場合は「住民税を納めた日の翌日」が計算の開始日となる。
 この計算方法をめぐり、多くの地方自治体で、給与所得者に対しても個人事業主と同じ計算を適用するミスによる給与所得者への未払いが発生していた。本来「納めた日の翌日」とすべきケースを、すべて「減額通知のあった日の翌日から1カ月後」として日数を計算してしまい、本来よりも短い日数に応じた還付金を支払っていたわけだ。15年2月には、奈良市が約6年間に1890人の計算でミスがあり、計約1200万円が未払いになっていたことを発表した。また兵庫県でも14年までに21市町で3400万円の未払いがあったことが発覚している。同様の未払いは全国で起こっているとみられ、その総額は15億円に達するとの調査結果も出ている。発覚した自治体は未払い額を納税者へ返還する手続きを進めているが、返還が認められるのは時効となる5年以内の未払いに限られるため、返還を受けられない納税者は多数に上ると思われる。
 そのため、15年度税制改正では、還付金の起算日にかかる計算方法が統一されることとなった。給与所得者に対する日数計算の開始日を「還付申告をした日の翌日から1カ月後」に見直す。個人事業主らの計算期間とほぼ統一することで、混乱をなくす狙いだ。
 新しい計算方法は4月1日から施行されている。

2015年6月18日
雑所得になる馬券払戻金って?  該当のための条件はキビシイ

 馬券の払戻金の所得区分に関する法令解釈通達がこのほど改正され、馬券購入スタイルや規模にかかわらず一時所得だったものが、一部は雑所得として取り扱われるようになった。ただし、国税庁が一時所得から馬券や競輪の車券の払戻金を外すのは、限定された条件下であることに注意する必要があるようだ。
 雑所得に該当するのは、馬券の自動購入ソフトウエアを使用して、独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットで購入したケース。長期間、頻繁に、個々の馬券的中に着目しない網羅的な購入をして多額の利益を恒常的に上げるような買い方であれば、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として雑所得になる。「特定の馬のファンになって応援する」「競馬場で馬のコンディションを見て的中を狙う」といったような買い方では対象にならないようだ。
 これは、自動購入ソフトウエアを使って機械的に馬券を買っていた人が、外れ馬券を含む全馬券の購入費が当たり馬券の払戻金(収入)に対応すると最高裁で主張し、それが認められたのを受けて通達が改正されたことが大きく関係している。最高裁で主張が通った人と類似の購入法であれば雑所得にできるというわけだ。
 新たな取り扱いで計算した場合に過去の所得税が納め過ぎになっているようであれば、取り扱いの変更を知った日の翌日から2カ月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることで、納め過ぎの所得税が還付されるので確認をしておきたい。なお、法定申告期限から5年を経過している年分の所得税については、法令上、減額されない。

2015年6月11日
親事業者が閉鎖・縮小した下請企業をサポート  最大500万円、7月13日まで

 親事業者が生産拠点を縮小したり閉鎖したりして発注が減ってしまった下請企業を対象に、中小企業庁では新分野の需要開拓にかかる費用を補助する事業を行っている。その「下請小規模事業者等新分野需要開拓支援事業」の2次公募が5月29日から始まっている。
 対象となるのは、申請の日を起算日として過去2年以内に親事業者が事業所を閉鎖、生産拠点を縮小したり、起算日以降1年以内に親事業者が閉鎖や縮小したりする予定がある下請業者。複数の下請事業者でつくる事業協同組合も含まれる。売上高が前年比マイナス10%以上の見込みであることが要件となっている。
 親事業者の閉鎖・縮小が確認できる書類と、売上高の減少率を確認できる資料、新規需要開拓にかかる事業計画書や経費明細書を作成して申請することで、新規事業にかかる費用の3分の2の補助金を受け取ることができる。補助限度額は500万円だが、100万円未満の場合は補助金の対象とならない。
 新規需要開拓のための事業とは、取引先多様化のための試作、開発、展示会出展などを指す。具体的に補助対象となる費用は、@特許権、実用新案権、意匠権、商標権などを取得するための費用、A事業に必要な調査などを委託するために支払われる費用、B臨時的に雇い入れたパートやアルバイトの賃金や交通費、C試作品や商品を紹介する展示会を開催したり出展したりするための運搬費、保険料、翻訳料、D商品紹介のためのパンフレット作成やウェブページ開設にかかる費用、E事業に必要な機器設備類の購入費とリース料、F試作品の作成費用、実験費用―など多岐にわたる。申請期限は7月13日。郵送の場合は最終日17時必着なので気を付けたい。

2015年6月4日
年金代わりのリバースモーゲージ  空き屋対策にも効果あり?

 5月26日に空き屋対策特別措置法が施行された。全住宅の7軒に1軒が空き家で、その数は820万戸にも上るといわれている。この空き屋問題解決の一助になるのではないかと期待される金融商品がある。それが、自宅を担保にして金融機関や公的機関から老後資金を借り、死亡後に自宅を売却することで借りたお金を返済するリバースモーゲージだ。現在、30余りの銀行がこの関連商品を販売している。
 住宅購入資金を金融機関から一括で借り入れ、毎月一定額を返済することで借入残高が減る住宅ローンに対して、リバースモーゲージは、融資を受けることで借入残高が増えていくためリバース(逆)モーゲージ(担保)といわれている。
 リバースモーゲージのメリットは、愛着ある自宅に住んだままお金を手にすることができる点だ。毎月一定額を受け取る年金と似ていることから住宅担保年金と呼ばれることもある。
 一方、デメリットとしては、不動産の立地条件や建物の規模や状態によっては、希望通りの融資が受けられないことなどが挙げられている。また、金融機関としては、融資額の回収が住人の死後になるため、時間的なリスクからあまり高い金額は融資されないという実情がある。おおむね、住宅の時価の50%か、もしくは1500万円までと決められていることが多いようだ。
 このリバースモーゲージによって、これまでは空き屋として放置されていた建物を担保にお金を借りるケースや、賃貸として貸し出すケースが増加すると見られている。リバースモーゲージが空き屋の減少につながるのか今後に注目したいところだ。

2015年5月28日
「企業統治指針」ってなに?  上場企業で6月から適用!

 企業が透明かつ公正な意思決定をするために守るべき行動規範として国が定めた「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の運用が6月からスタートする。2015年3月に開催された金融庁と東京証券取引所の共同事務局による有識者会議で、東証に上場しているすべての企業が守るべき規則として導入が決まった。
 該当する上場企業には、独立性の高い社外取締役を2人以上置くこと、適切に情報を開示すること、女性の活用を促進することなどが求められる。
 「守るべき規則」といっても強制力や罰則はない。ただし、コードの原則として「コンプライ・オア・エクスプレイン(従うか、それとも説明するか)」とされているため、指針に従わない場合はその理由を株主に対して説明しなければならない。
 日本の企業のROE率(自己資本利益率)が低いことを受けてコード導入が決まった。ROE率とは株主から預かった資金を使ってどれだけ効率的に稼いだかを意味するもの。日本のROE率の平均は約8%で、欧米平均の15%と比べて大きな差がある。
 これはつまり、日本の企業は株主から預かった資金を使って効率的に経営ができていないことを意味する。改善の必要が生じたため、導入されることとなったわけだ。

2015年5月21日
人気のプレミアム商品券  97%の自治体が実施

 「プレミアム商品券」が話題だ。全国の自治体や商工会などが発行する、購入額に一定額のプレミア(上乗せ)がついた商品券のことをいう。自治体によって、20〜30%のプレミアがつくことが多い。全国にある1788自治体のうち、97%にあたる1739自治体がプレミアム商品券を販売、もしくは今後販売を予定している。
 プレミアム商品券だけでなく、他の都道府県から観光に来てもらうことで地元の活性化につなげようとプレミアム宿泊券(旅行券)を販売する自治体もある。
1万円分の宿泊券が5千円で買える鳥取県の「プレミアム宿泊券とっとりでまっとるけん」は、わずか4分で販売予定数の1万4千枚が完売した。また徳島県が販売した宿泊施設に実質半額で宿泊できる「おどる宝島!とくしま旅行券」も販売開始から1日で、予定枚数の3万3千枚を完売している。
 人気が集中したことで抽選を行う場合もあるほか、完売して予定を前倒しで終了する自治体もある。
 今後も各自治体により順次販売が予定されているプレミアム商品券だが、利用が大型店舗に集中してしまい、地元の商店街をはじめとする地域経済の活性化にはつながらないとの批判がある。これについては、大型店に利用が集中しないよう使用場所を制限する動きも出てきている。
 滋賀県大津市のプレミアム商品券「おおつ光ルくんのお宝プレミアム商品券」では、1万2千円分の商品券のうち8千円分は大型店を含む登録店すべてで使用できるが、残りの4千円分は大型店以外の登録店のみに使用を制限するなど、各自治体でそれぞれの特色を生かした取り組みが進められている。

2015年5月14日
コンプライアンス・経理水準向上へ  自主点検チェックシート【入門編】を見てみよう!

 全国法人会総連合(全法連、池田弘一会長)が、企業が自社のコンプライアンスや経理水準をチェックできる「自主点検チェックシード・ガイドブック」の「入門編」を作成し、4月15日にホームページ上で公表した。これまであったチェックシートでは全83項目だったが、「企業にとってより取り組みやすいものを」との要望に応えて日本税理士会連合会(日税連)の監修のもとで、企業のガバナンス確保に必要な基本40項目+補足5項目の計45項目に絞った。ぜひチェックシートを活用して自社のコンプライアンスや経理水準を向上させ、会社の成長につなげたい。
 チェックシートは「社内体制」、「貸借関係(資産科目)」、「貸借関係(負債・資本科目)」、「損益関係」、「その他」の5分野に大きく分かれ、さらに該当取引があるときのみ利用する「小切手・手形関係」、「損益関係(福利厚生費)」の補足2分野から成り立っている。それぞれの分野で、さらに「現預金・小切手」や「棚卸資産」、「借入金」などの細かい項目ごとに、管理がしっかりとされているか、会計上の処理が正しくされているかなどを一つひとつ確認できるようになっている。またシートには必要に応じて会社独自で設定する点検項目を追加するスペースも用意されているため、それぞれの会社で、使いやすいようにアレンジすることも可能だ。点検日時記入欄も複数用意されているので、一度チェックして終わりではなく、不備が見つかった点については改善計画を立てて実施し、何度も繰り返しチェックすることが重要だろう。
 もともとこのチェックシートは、中小企業の税務コンプライアンス向上を目的として、2014年に全国法人会総連合が作成したもの。その「正式版」は、全83項目にわたって企業の内部統制や税務コンプライアンスの水準をチェックできるようになっている。だが項目数が多い分、細かいところまでチェックすることが可能になる一方で、企業の取り組みへのハードルを高くしていると指摘されていた。そうした声を受け、全法連は今回の「入門編」の作成に踏み切った。チェック項目がより重要で基本的なことに絞られ、「正式版」に比べて手軽に活用できるようになっているわけだ。とはいえ「正式版」、「入門編」ともに日税連の監修を全面的に受けているため、実践的な税務のポイントのすべてをしっかり押さえられるようになっている。
 内部統制や経理水準を向上させることは、「入出金が適切に管理されるようになる」「内部の不正行為を未然に防止できる」など、結果的に企業の成長につながることが期待できる。逆に内部統制・経理水準の面に不足があると、「売掛債権が未回収となる恐れがある」「重要書類を紛失してしまうことがある」「会社の資産が不明確になる可能性がある」など、経営上の大きな問題に発展することも考えられる。
 全法連は「企業を成長させるためには、売上を増やし利益を上げることはもちろんですが、内部統制面の強化や経理面の質を向上させることも重要な要素です」として、チェックシートの活用を呼び掛けている。まずはこの「入門編」で自社のコンプライアンスの水準を把握し、さらに内部統制や税務リスクを軽減させようと思ったときに、83項目の「正式版」を活用するのが賢い使い方だろう。

2015年5月7日
Windows Server2003終了  この機会に攻めの“IT化”に!

 来年1月からいよいよ実施される共通番号(マイナンバー)制度。従業員やその家族、取引先など、自社と関わる幅広い領域に影響が及ぶものだ。マイナンバー対策に関する投資は「生産性を生み出さないコスト」と捉える経営者が多いのは確かだが、情報漏えいが発覚した場合は厳重な罰則もあるため無視はできない。経営リスクの一つと念頭に置いて取り組むべきだろう。
 とはいえ、どこまで対策を講じればいいのか分からないと悩む企業は少なくない。実際には必ずしも大がかりなシステムが必須というわけではないという。「いまの管理体制にもうひとつ上乗せしたもので問題ない」という専門家もいる。できる限りコストをかけずに行うためにも、使える制度は知っておいて損はない。
 新しく設備導入を検討する時の税制優遇措置にも活用の幅は広がっている。制度に対応した人事や給与システムを再構築する時にソフトウエアを購入する場合は、中小企業投資促進税制の「上乗せ措置」も活用したい。中小企業投資促進制度は、機械措置などの設備を取得した時に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除が適用されるものだが、購入設備が、生産性向上設備投資促進税制の対象機器などに該当すればさらに上乗せの措置がある。マイナンバー制度に対応する最新のソフトウエアを購入する際はぜひ検討したい。取得価格の要件は、ソフトウエアであれば1個あたり30万円以上で、1事業年度内で合計取得価格が70万円以上となる。
 今年の7月にはウインドウズサーバー2003の終了も控えている。昨年4月はウィンドウズXPのサポート終了に伴いPCの入れ替え作業に苦労した企業も多いだろう。一息ついたところで、まだ頭の痛い問題だ。昨年は、駆け込み購入なども活発になっていたものの、リスクがあると分かっていながら使用続けている企業も少なくなかった。今回はサーバーのサポート終了ということで、サポートが切れたサーバーを使用し続けることでリスクも高まる。セキュリティーが脆弱化したサーバーは情報漏えいのリスクの温存となる。他社のサーバーや社内サーバーなどに入れ替えや移行を検討したい。

2015年4月23日
燃料電池車が400万円で買える!?  法人も対象

 安倍晋三首相は4月13日、日本初となるショールームを併設した「水素ステーション」の開所式に出席した。総合エネルギー事業を展開する岩谷産業が運営する水素ステーションに、トヨタ自動車のショールームが併設されている。首相は「本格的な水素社会の幕開けの象徴。全国76カ所で水素ステーションを整備することが決まり、世界にも類のないスピードと規模で水素エネルギーのインフラが動き出し、日本は水素エネルギー革命のフロントランナーとなったと言ってもいい」と述べ、燃料電池自動車(FCV)や水素ステーションの普及、推進に意欲を示した。
 燃料電池自動車とは、水素と酸素の化学反応による電気エネルギーで走る自動車で、水素ステーションで燃料を補給することになる。排気ガスや二酸化炭素を排出せず、究極の次世代エコカーとして期待されている。
 だが、1台700万円以上という販売価格の高さに加え、水素ステーションの整備にかかるコストが普及を遅らせている要因だとして指摘されている。水素ステーション建設には1カ所あたり4〜5億円かかり、費用の約半分を国が補助している。
 東京都では「2020年までに都内の普及台数を6000台にする」と具体的な目標を掲げている。政府が推進する「水素社会」の実現に向けて、都でもFCVの普及促進に取り組んでおり、国の補助金の半額を出すなど、事業者や個人を対象に購入費用を補助する事業を行っている。
 仮に、販売価格が723万円程度のFCVを購入すると、都の補助金は1台あたり101万円で、国の補助金(202万円)と併せると、実質的な自己負担は約420万円ということになる。なお国の補助額は車両によって異なり、最大202万円となっている。東京都の他、神奈川や埼玉などでも同様な制度が実施されている。

2015年4月16日
ふるさと納税、自分の控除上限はいくら?  総務省が目安を公表

 ふるさと納税を利用して寄付すれば税金が控除されるのは知っている。でも実際自分が寄付をした場合、どれくらいまで税金が控除されるのだろうか――総務省が4月3日に開設した「ふるさと納税ポータルサイト」では、年収や配偶者、子どもの人数などによって変動する、ふるさと納税をしたときに全額が控除される寄付金額の目安を公表している。
 ふるさと納税制度は、故郷や応援したい自治体に寄付をすると、寄付金額から2000円の手数料を引いた額が、今自分が住んでいる自治体に納める所得税と住民税から控除される制度。ただし控除される額には限度があり、上限を超えた寄付金額については自己負担となる。
 平成27年度税制改正では、今年1月1日からの寄付について、控除上限額が個人住民税所得割額の約1割から約2割に引き上げられた。さらに4月1日以降の寄付については、給与所得者など確定申告をする必要がない人は、5つまでの自治体への寄付なら確定申告が不要になる。これらの改正を受けて、さらなる利用拡大が見込まれることから、総務省は今回改めて条件ごとに全額が控除される寄付金額の目安をまとめた。
 寄付をした場合の控除上限額は、本人の年収のほか、配偶者がいるかいないか、いる場合は配偶者控除の対象となる年収141万円未満かなどによって変動する。また子どもがいる場合、大学生か、高校生か、中学生以下かでも変わってくる。例えば、年収700万円で、専業主婦の配偶者と2人の子ども(大学生と高校生)がいる会社員の場合、全額控除される寄付金額は7万5千円となり、前年までの約2倍となる。
 今回公表された目安金額は給与所得者のケースなので、事業者や年金生活者の場合は異なるので注意が必要だ。また寄付額のうち2千円は必ず自己負担となる。ポータルサイトでは、自分の年収や家族構成を記入することで控除上限額を計算してくれるシミュレーターも用意しているので活用したい。

2015年4月9日
研究開発税制が改正  連携強化で変革促す

 3月31日、2015年度税制改正法案の関連法が成立した。これによって法人税改革や17年4月の消費再増税などが確定したことになる。4月1日からさっそく適用されている新税制も多くあり、改正「研究開発税制」もその一つだ。
 研究開発税制は、民間企業の技術研究への投資に税優遇を設けて、技術革新の加速を促すことを目的として1967(昭和42)年に創設。同税制には、@試験研究費が過去3年平均より増加した場合に使える「増加型」、A試験研究費の対売上比率が10%を超えた場合に使える「高水準型」、B試験研究費総額に対して使える「総額型」――の3種類があり、控除額はそれぞれ増加型が「試験研究費の増加額×5〜30%の控除率」、高水準型が「売上高の10%を超える部分の試験研究費×控除率」、そして総額型が「試験研究費の総額×8〜10%(中小企業は12%)」となっている。また総額型のうち、自社だけではなく他社や大学、民間研究所の技術などを組み合わせて革新的なビジネスモデルや製品を開発する「オープンイノベーション(OI)」型については12%の控除率を認めている。このうち、OI型を含む総額型に、上乗せ措置として増加型か高水準型のうちいずれかを加えて利用できるものだ。
 15年度税制改正では、他社・他機関との連携によって技術開発を行うOI型が大幅に拡充された。政府は、欧米などに比べて日本企業が自前で研究を完結させてしまう傾向が強いことを問題視し、税優遇を強化することでOI型への変革を促す狙いだ。
 改正されたOI型は総額型から独立分離し、これまでの「総額型+増加型または高水準型」にさらに別枠で上乗せできるようになった。控除率もこれまで12%だったところを、企業間の共同研究で20%、大学・特別試験研究機関などの共同・委託研究については30%へと大幅に引き上げ、さらにOI型の研究対象費に、大企業が中小・ベンチャー企業の持つ技術を使用する際などに支払う知的財産権使用料が追加された。大企業が中小企業の知的財産を500万円で利用した場合、これまでは最大50万円の税額控除だったところが、改正後は2倍の100万円が控除されることになるわけだ。
 また、控除上限は、総額型とOI型を別枠化した上で、合わせて30%を維持する。控除しきれなかった額を翌年に繰り越せる繰越控除制度は廃止されている。
OI型の税優遇を大幅に強化することで、武器となる技術を持つ中小企業と、その技術を必要とする大企業との連携が今後増えていくことを政府は期待している。

2015年4月2日
2015年度税制改正  住宅購入意欲を喚起する見直し

 昨年4月の消費増税以降、駆け込み需要の反動減からの立ち直りは政府の予想を超えて遅れている。その影響は、消費税額が高額になる住宅購入でより顕著なものとなっている。2017年4月には10%への再増税が予定されているため、さらなる住宅需要の落ち込みも予想されるなか、政府は低迷する住宅購入需要を喚起するため、15年度税制改正で住宅に関連するさまざまなてこ入れを図る。
 その代表的なものが、マイホーム購入者の金利負担を軽減する「住宅ローン減税」の延長だ。同制度では、住宅ローンを組んで、居住用の住宅を取得すると、ローン残高か住宅の取得対価のいずれか少ないほうの金額の1%が、10年間にわたって所得税から控除される。また所得税から控除しきれない場合は住民税からも年13.65万円まで控除される。控除額は、耐震性や保存性に優れた長期優良住宅・低炭素住宅などは10年間で最大5千万円、それ以外の住宅は10年間で最大4千万円となっている。現行では17年末までの時限措置だったが、15年度税制改正では同制度を19年6月末まで1年半延長する。17年4月に行われる予定の消費再増税後の住宅需要の落ち込みに備える狙いだ。
 住宅ローン減税の恩恵を十分に享受できない低所得者層向けの施策としては、住宅を取得した人に一定金額を給付する「すまい給付金」があるが、こちらも現行は17年末までに引き渡されて入居完了した住宅が対象となっているところを、19年6月末まで1年半延長する。
 住宅購入意欲を刺激するため、一括贈与の非課税特例も拡充される。子や孫などへの住宅取得資金の一括贈与を、最大3000万円までを非課税とし、期限を19年6月末まで延長する。経済的な理由から住宅購入に踏み切れない若年層を後押ししたい思惑だ。
 ほかに住宅関連では、「空き家」にかかる固定資産税の特例が見直されそうだ。現行制度では、廃屋であろうと、家屋が建っている敷地は「住宅用地」と見なされ、敷地200u以下の住宅用地の課税標準額は更地(固定資産税評価額)の6分の1となる。国はこの制度が空き家放置の主因になっているとみて、15年度税制改正で、倒壊の危険性があるなど自治体が認定した「特定空き家」については、優遇措置の対象から除外する。再活用のあてがないなどの理由で空き家を放置してきた所有者にとっては、自治体に「特定空き家」だと指定されてしまうと固定資産税額が6倍に跳ね上がることになるので注意が必要だ。

2015年3月26日
障害者の税務  相続税の基礎控除額が引き上げ

 障害のある子どもを持つ親は、自分たちが亡き後の子どもの生活に不安を抱えている人も多い。社会保障だけに頼るだけでは心許なく、できる限り子どもの経済的な支えとなる財産を残してあげたいと思うものだ。
 今年1月から相続税の基礎控除額が引き下げられているなかで、85歳までの障害者に対する相続税の税額控除額は引き上げられていることに注目したい。平成25年度税制改正で見直され、控除額は1年につき10万円(特別障害者は20万円)となる。改正前は6万円(同12万円)だった。27年1月1日以後の相続または遺贈によって取得する財産の相続税から適用されている。
 障害者控除の対象となる障害者とは、「精神または身体に障害がある者」と政令などで定められた人で、さらに重度の障害がある場合は特別障害者とされる。
 障害者本人に対してさまざまな税務上の特例措置が認められている。たとえば、納税者本人が障害者である場合は、所得税控除は27万円(特別障害者は40万円)となっている。
 また障害者を対象にした信託に関する非課税措置もある。信託受益権である特別障害者1人につき6千万円(それ以外の障害者は3千万円)までの贈与税が非課税となる。これは「特定障害者扶養信託契約」に基づいた信託契約で、委託者である親族が、金銭や有価証券などの財産を信託会社または信託業務を行う金融機関(受託者)に信託することだ。
 信託会社などの受託者は、信託された財産を管理・運用し、受益者の生活費全般のために金銭を交付する仕組みだ。特例が適用されるためには、信託される日までに信託会社などを経由して「障害者非課税信託申告書」を納税地の税務署に提出することが必要だ。

2015年3月19日
住宅エコポイントが再開  リフォームで最大45万円相当補助

 法令で定められた省エネ基準を満たす住宅を新築またはリフォームした場合にポイントが付与される住宅エコポイント制度が、「省エネ住宅エコポイント」と名称を変えて“復活”する。住宅ポイント制度を再開することで、消費増税後に落ち込んだ住宅市場を活性化することが政府の狙いだ。
 省エネ住宅エコポイントとは、省エネ性能を備えた住宅を新築またはリフォームした場合にポイント(1ポイント=1円)が発行され、商品交換や追加工事費などに充てることができる制度をいう。
 今回は、閣議決定された平成26年12月27日以降に契約し、28年3月31日までに着工する住宅が対象。だが、国土交通省によると「1月に閣議決定された補正予算案に計上された予算枠(805億円)に達した段階で締め切ることもある」という。
 付与されるポイントは、新築では1戸あたり30万ポイントと前回と同じだが、リフォームの場合は3千〜12万ポイント(前回は2千〜10万ポイント)とアップしている。ただし、リフォームは新築と違い、断熱性の窓や床の設置などの工事内容ごとに加算され、最大で30万ポイントとなる仕組みだ。さらに耐震改修をすれば15万ポイント上乗せされる。
 内容も拡充され、新築の分譲住宅が対象住宅に追加される。リフォームでは、省エネ機能を搭載した給湯機や節水型水栓などの設備も対象になった。またトイレや浴槽をリフォームする場合、従来では窓や床などにも断熱性を施すことが条件だったが、新制度では省エネ設備の改修だけでもポイント対象となる。
 気になるポイント交換だが、さまざまな事業者が省エネ商品を提供しており、家電製品とも交換が可能だ。たとえば、人気の家庭用ロボット掃除機や圧力IH炊飯ジャー、雨漏りタンクなどもある。
 ポイントが発行されるためには、発行申請や交換申請、完了報告などの一定の手続きを踏む必要がある。なお10日からポイント申請書の受け付けが開始されている。

2015年3月12日
マイナンバー 社員の番号 10月から収集可能  20種類の調書が3年記載猶予

 内閣官房は2月17日、「事業者による個人番号の事前収集について」とするお知らせを発表し、マイナンバー制度の開始前でも企業が社員の個人番号を収集してよいとする見解を示した。2016年1月の運用スタートに向けて、企業は前もって社員の個人番号を収集して制度開始に備えることができる。
 すべての個人と法人に番号を割り振って税や社会保障を一元管理するマイナンバー制度は、今年10月に個人番号の通知が開始される。事業者は来年1月以降のすべての給与の源泉徴収票や報酬の支払調書に個人番号を記載することが義務となるが、実際にマイナンバーの取り扱いが始まるのは来年のため、今年のうちに前もって社員などの個人番号を収集することはできないのではないかと危惧する声があった。それを受けて、内閣官房はホームページ上にQ&A方式のお知らせを掲載し、「あらかじめ個人番号を収集することは可能」との見解を明確化した。
 これにより、番号が通知される10月から制度が開始する1月までの間に、企業は個人番号を収集し、特定個人情報ファイルを作成するなど事前準備にあたることが可能となる。ただし番号収集に際してはマイナンバー関連法で定める本人確認措置に従って番号が本人のものかどうか確認する義務があり、「番号通知カード」と運転免許証やパスポートなどの写真付き身分証明書が必要になるので注意が必要だ。
 また、マイナンバーの番号記載を猶予する法定調書の一覧を国税庁が公表している。原則的に16年1月1日以降に発生する支払いについての法定調書には個人番号や法人番号の記載が義務付けられるが、猶予規定が設けられたものについては、3年間は番号を記載しなくてもよい。猶予される調書は、非上場会社が配当を行った時に税務署に提出する「配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書」や、みなし配当があった時に提出する「配当等とみなす金額に関する支払調書」、「株式等の譲渡の対価等の支払調書」など20種類。100万円を超える海外への送金について作成される「国外送金等調書」など、大半は金融機関が作成する調書となっている。

2015年3月5日
2015年度 税制改正のポイント  大盤振る舞いの贈与非課税特例

 開催中の第189回通常国会に、2月17日から20日にかけて2015年度税制改正法案が提出された。内容はおおむね昨年末に決定された与党税制改正大綱を踏まえたもので、提出された法案は今後の審議を経て成立し、公布・施行されることになる。
 15年度税制改正の大きなポイントの一つに、各種贈与の非課税特例の創設・拡充がある。これらの特例は、マイホーム購入や結婚育児など特定の目的に限定した一括贈与について、まとまった額を非課税にするものだ。政府は贈与の非課税特例を充実させることで、880兆円にも上るというシニア層の持つ「タンス貯金」を、消費意欲の旺盛な若年層に移動させる狙いがある。また、経済的理由から結婚や出産に消極的な若年層を贈与によって後押しすることで少子化対策につなげる思惑もあるようだ。
 そうした目的のもと創設されたのが、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例だ。19年3月31日までの時限措置として、結婚・出産・育児資金目的に限り、20歳以上50歳未満の子や孫への一括贈与を受贈者1人あたり1千万円まで非課税にする。どこまでが結婚・出産・育児資金にあたるかは、法案では「政令で定めるものに充てる金銭」としか書かれていないが、財務省の資料によれば、結婚資金には「挙式費用・新居の住居費・引っ越し費用」、出産資金には「不妊治療費・出産費用・産後ケア費用」、育児資金には「子どもの医療費・子どもの保育費(ベビーシッター代も含む)」などが想定されているようだ。贈与者は金融機関に専用の口座を開設し、1千万円を上限(結婚資金に限れば300万円)として資金を拠出する。受贈者はそこからお金を引き出して利用するたび、領収書等を金融機関に提出し、目的にかなった出費かをチェックされることになる。
 非課税上限は1千万円だが、受贈者が50歳に到達するか、贈与者が死亡した場合には、その時点での使い残しに対して、それぞれ贈与税か相続税が課税される。例えば孫が3人いる場合、最大3千万円の財産を孫に移すことができるが、相続発生までに使い切れなかった分については相続税の対象となるわけだ。
 なお、子や孫が結婚したり出産したりする際にその都度金銭的援助をする「都度課税」については、従来と変わらず今後も非課税であるという認識を財務省は示している。(法案提出に伴いタイトルを「2015年度税制改正のポイント」に変更しました)

2015年2月26日
NISA  2年目の非課税枠で好調スタート

 日本証券業協会は2月18日、少額投資非課税制度(NISA)を利用した投資総額が1月だけで2627億円となり、制度が開始した昨年1月以降の単月ベースでは最高を記録したと発表した。年が明けて今年分の非課税枠が利用できるようになったことで、口座を持つ投資家たちが新たに投資を始めたことが理由とみられる。1月単月で新規に約8万口座が開設され、それ以外にも約4万の「開設したまま眠っていた口座」で投資が開始されるなど、利用拡大に向けて2015年の好調なスタートを切った。
 調査は主要証券会社10社を対象に行ったもの。これでNISA総口座数は、1月末時点で414万3836口座となった。また口座の稼働率も46.8%と、昨年末から1.7ポイント増加した。
1月のNISA利用が伸びたのは、15年分の非課税枠が新たに開放されたためだ。去年、上限として設定されている100万円いっぱいまで投資を行った人も、年が明けた1月からは新たに今年分の100万円を投資運用することができる。すでに去年からNISA口座を持っていた投資家が活発に動いたことが投資総額増の主因だろう。
 NISAの非課税枠は現在100万円だが、16年からは120万円に引き上げられる予定となっている。月10万円ずつの投資で枠を使いきりやすくする狙いで、金融界などからの強い要請を受けて、平成27年度与党税制改正大綱に盛り込まれた。また20歳未満を対象とする子ども版NISAも創設する予定だ。

2015年2月19日
中小企業サポート  経営改善計画の申請期限撤廃

 経営革新等支援機関が関与する「経営改善計画策定支援事業」の利用申請受付期限が撤廃され、制度が“恒久化”されることになった。
 経営革新等支援機関制度は、中小企業が、税理士、公認会計士、弁護士、商工会、商工会議所、NPO法人、一般社団法人など中小企業支援の専門家のサポートを受けて経営改善計画策定に取り組めるもの。認定機関の支援を受けた企業は、優遇融資や税額控除制度の対象になるほか、経営改善計画の策定に必要な費用の3分の2(最大200万円)の補助を受けることができる。
 平成27年3月31日を利用申請期限としていたが、中小企業庁事業環境部金融課が「平成27年度以降についても、引き続き当該事業を利用できるようになりました」とする文書を発表し、中小企業は4月以降も制度を利用できるようになった。さらに、支援対象事業者に従業員300人以下の医療法人が追加された。

2015年2月12日
エコカー減税  現行基準満たす車への軽減割合縮小

 エコカー減税制度は、燃費基準が改められるとともに、現行基準に当てはまる車は軽減割合を縮小したうえで引き続き減税対象にされることとなりそうだ。改めて税制改正大綱を確認しておきたい。
 一定の燃費基準を満たした車に対する自動車取得税の減免制度「エコカー減税」では、車の環境性能の高さに応じて、自動車購入時に必要な自動車取得税が60%軽減、80%軽減、非課税となる。税制改正大綱には、この制度の対象になる車について、現行では「平成27年度燃費基準」とされている基準が、4月からは「平成32年度燃費基準」に置き換えられることが盛り込まれた。そして、現行対象車である27年度基準を満たしている車については、20%軽減、40%軽減として引き続き減税対象にすることとした。これらの施策で環境性能の高い車への買い替え需要を喚起する狙いが国にはある。
 また、平成27年度に新規取得した一定の環境性能がある軽四輪などの軽自動車税について、その燃費性能に応じた「グリーン化特例」が導入されることとなっている。さらに、二輪車に掛かる税率引き上げ時期は平成27年4月1日からの予定だったが、税制改正大綱では1年間延期するとしている。
 日本自動車工業会の池史彦会長は、「特に、エコカー減税の見直しに当たっては、現行の2015年度燃費基準による対象車の一部を、引き続き減税対象とする等の措置を講じた上で延長していただき、自動車ユーザーの負担増や国内販売への影響を最小限に抑えることができた」と高く評価している。

2015年2月5日
海外旅行の購入品に課税  品目により異なる税率

 海外の旅行先で購入した商品を日本に持ち込む時に掛かる免税の範囲は品目によって決められている。内容は国によってさまざまで、日本の税関だと、タバコ1カートン、酒3本(1本760cc程度)、香水2オンス、その他の物品購入20万円までが免税となる。
 香水は1オンス28mlで、香水の種類は大きく分けて、(1)Parfum(パルファン)、(2)Eau de Parfum(オーデパルファン)、(3)Eau de Toilette(オーデトワレ)、(4)Eau de Cologne(オーデコロン)と濃度で区分され、オーデコロンやトワレは制限の対象外だ。
 その他の物品購入の上限は20万円と決められている。1個が20万円を超える高額な場合は全額課税となる。購入費の合計額が20万円を超える場合には、その超えた品物に関しては課税対象だ。
 税関によると、課税額の算出には旅行者が有利になるような措置をとっているといい、金額が高く、かつ税額が多くなる品目から優先に免税になるようなシステムだという。たとえば購入したものが、15万円の時計、5万円の洋服、12万円の指輪、5万円のハンドバッグだとすると、合計額は20万円を超える。この場合、指輪とバッグの税率は他の品目に比べて高く設定されているため、それらを免税。時計と洋服のそれぞれの税率から課税額が算出される。
 一方、他の国の持ち込み制限は、たとえばシンガポールではタバコの持ち込みは全て課税対象となっている。また同国はガムに関する禁止事項も独自の規定があり、一部の商品を除いて販売や製造も法律で禁じられている。

2015年1月29日
運転資金 債務超過でも調達容易に  金融機関の検査指針改定

 金融庁は1月20日に「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」を改定し、融資先の企業が一時的に債務超過の状態であっても正常な債権に区分してよいとする内容を明記した。正常債権と見なされれば、企業は銀行から運転資金の融資を受けやすくなる。
 「金融検査マニュアル」は、銀行が中小企業に融資をする際に債権が正常か不良かを判断する基準を示したもの。これまでは、一時的であれ債務超過の状態であれば不良債権と見なされ、無担保・無保証の「短期継続融資」を受けることは難しかった。そのため、運転資金を必要とする経営再建中の中小企業が融資を受けられず、事業が続けられないというケースが起きていた。
 今回の改定では、債務超過の企業であっても、事業の状況やキャッシュフローなどを考慮して、債務の解消が見込まれると判断した場合には正常債権に区分してよいと明記した。中小企業が融資を受けやすくすることで経済再生を後押しするとともに、金融機関に対してもマニュアル一辺倒ではない正確な業況把握や融資判断を求める狙いがある。

2014年1月22日
事業用の土地建物  買い換えの税優遇 延長

 10年を超えて保有している事業用の土地や建物を買い換える際に、譲渡益にかかる課税の繰り延べを認める特例措置が、2017年3月31日まで2年3カ月延長された。2015年度税制改正大綱に盛り込まれた。同特例の適用実績では、中小企業の適用が全体の3分の2を占めている。
 特例は、10年超保有している事業用の土地建物などを譲渡し、新たに事業用資産を取得した場合に、譲渡した土地建物の譲渡益についての課税を一部繰り延べるもの。
 今回の改正では、新たに取得する資産の対象から機械・装置が除外された。また、繰り延べされる割合が現行では一律80%となっているところを、新たに取得する土地建物が東京23区内の場合は70%、首都圏近郊や近畿圏の都市部、名古屋市の一部など定められた都市圏である場合は75%に縮減された。

2014年1月15日
美術品で新基準  100万円以下は「減価償却資産」

 国税庁は12月25日、美術品が減価償却資産にあたるかどうかの基準を示した法令解釈通達の改正を公表した。これまで1点20万円(絵画は号あたり2万円)未満の美術品は減価償却資産として取り扱うとしてきたが、基準金額を大幅に引き上げて、100万円未満の美術品を減価償却資産として扱うとする新しい判断基準を定めた。昨年10月に改正案を発表してパブリックコメントを受け付けていたもの。新基準は平成27年1月から適用している。
 確定版では26年以前から保有している美術品についての新基準適用の部分に変更があった。10月の改正案では「平成27年1月1日以後に開始する事業年度において法人の有する美術品等について適用する」としていたが、以前から所有していた美術品について26年までの分の償却費を一括計上できるかを問うコメントが寄せられたため、今回の確定版ではさかのぼって償却はできない旨が明記された。平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度からは減価償却資産として計上することが可能となる。その場合、27年1月1日を取得日として、定額法または200%定率法を選択して償却することができる。中小企業であれば、30万円以下の減価償却資産なら取得価額を必要経費または損金に算入する少額減価償却資産特例を適用することもできるとしている。
 また、これまでは美術品が減価償却資産に該当するかどうかの基準として、作者が美術関係年鑑などに登載されている「プロの作者」であるものは原則として減価償却資産に該当しないとしてきたが、著名な作家であっても年鑑に掲載されていないケースがあることや、またその逆のケースもあることから、基準そのものを廃止した。

2014年1月8日
受取配当の課税割合  持ち株比率5%未満 80%課税

 政府・与党は2014年12月21日に、関連会社から受け取る株式配当への課税を2015年度から強化する方針を固めた。持ち株比率5%未満の会社の配当は現在の50%課税から80%に、25%以上33.3%未満では非課税から50%に課税することになる。現在、持ち株比率が25%未満の株式は配当の5割に課税し、25%以上の株式は非課税になっている。政府は、税制改正大綱に盛り込む方針だが、持ち株比率25 %未満の会社から受け取る配当への非課税額のうち35%が金融業界となっており、「およそ1000億円の増税になる」として反対意見が根強い。